平成22(行ケ)10234号:
請求認容
本件は、無効審判不成立審決に対する取消を求めるものです。
裁判所の判断は38ページ以下
本判決は、まず、石膏廃材のような石膏製品の二水石膏を加熱脱水することで半水石膏や無水石膏を再製できることは周知技術であるとした上、石膏を加熱して無水石膏を得る技術が開示されている甲1発明において、加熱する石膏として石膏廃材を用いることは容易に想到できることであると判断しました。この判断の背景には、原料の入手方法について検討することは当然の技術的事項という判断があるように思われます。
本判決は、次に、ナフタレンスルホン酸基の分解温度である850度以下において石膏廃材を加熱して無水石膏を焼成することは出願当時の周知技術であるとした上、甲1発明において、ナフタレンスルホン酸基を含む石膏廃材を供給する石膏として用いることは容易想到であると判断しました。
そして、本判決は、850度で石膏を焼成した場合におけるナフタレンスルホン酸基の分解による硫黄酸化物の発生という訂正後発明1の課題を指摘した文献はない等の原告の反論に対して、もともと、周知技術の内容は、硫黄酸化物の発生を防止するため、850度以下において石膏廃材を加熱して無水石膏を焼成するというものであり、課題認識の有無にかかわらず、課題解決手段が示されている上、課題自体が発生することなく、訂正後発明1と同様の効果を達成しているから、課題を指摘した文献がないことは、容易想到であるとの判断の妨げにならないと判断しました。この点は、硫黄酸化物の発生自体は周知技術においてはも課題として認識されており、かかる課題と訂正後発明1の課題との相違は、硫黄酸化物の発生原因がナフタレンスルホン酸基の分解にあることの認識の差異にすぎず、課題が現象面の問題であることを考えれば、硫黄酸化物の発生原因が何であるかは重要ではなく、したがって、訂正後発明1の課題は、実質的には周知技術の課題と同一ともいえると思われます。
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