1 賃金―毎月1回以上一定期日払の原則
賃金は毎月1回以上一定の期日を定めて支払わなければなりません(労基法24条2項)。そして、同規定に違反した場合、30万円以下の罰金に処せられます(労基法120条)。しかし、法は不可能を強いるわけではありませんから、震災が原因であり社会通念上なすべき最善の努力をした場合には期待可能性がないものとして不処罰となります。また、地震災害により残念ながら事業再開の見込み立たない場合には、未払賃金の立替払制度の利用を検討してみて下さい。同制度については、必要書類の簡略化など厚生労働省より被災地の実情に即した運用を求める通達が出ていますので、最寄りの労働基準監督署に相談してみて下さい。
2 賃金の引下げ
賃金は、就業規則(給与規程・退職金規程を含む)で定められていることが多いでしょう。その場合には、賃金を引き下げるには、就業規則の変更が必要になります。この点、最高裁判所は就業規則の変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されないが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されないとしています(最判平9・2・28)。
「合理的」か否かは、変更の内容・程度と変更の必要性との比較考量を基本とし、変更との関連で行われた労働条件改善の有無・内容を十分に考慮に入れ、かつ変更の社会的相当性や労働者との交渉経緯などをも勘案して判断されます。特に、労働者との交渉には留意が必要です。
3 退職金の支払遅延
退職金については、その支払いを遅延しても、震災等天災地変その他やむを得ない事由による場合には、その事由の存する期間は同遅延損害金を支払わなくてもよいことになっています(賃確法6条)ので、今回は、遅延損害金の支払いは不要です。
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