知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

紙容器用積層包材審取

2011-12-21 04:07:55 | 最新知財裁判例

紙容器用積層包材審取

平成23年(行ケ)第10139号 審決取消請求事件

請求認容

裁判所の判断は13ページ以下。

争点は新規事項の追加及び容易想到性です。

本判決は、一般論として、「特許法17条の2第3項は,「第1項の規定により明細書,特許請求の範囲又は図面について補正するときは,誤訳訂正書を提出してする場合を除き,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した事項の範囲内においてしなければならない。」と規定しているところ,ここでいう「明細書又は図面に記載した事項」とは,当業者によって,明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は, 「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる」と述べた上、「本願発明に対する本件補正は,当初明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるといえるから,特許法17条の2第3項所定の「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる」と判断しました。

本判決は、次に、容易想到性に関し、「本件補正発明6の相違点1に係る構成に示された各種の特性パラメータは,いずれも,本件補正発明の有する効果である押出積層特性及び良好なコンバーティング特性を実現するために特定されたものであると認められる。したがって,本件補正発明6の相違点1に係る構成の容易想到性の判断に当たっては,引用例1の記載及び本件優先権主張日当時の技術常識に照らして,引用例1に接した当業者が,上記特性パラメータを特定することを容易に想到することができたか否かを検討する必要がある」と述べた上、「引用例1には,スウェリング率について何ら記載がないから,引用例1に接した当業者は,引用発明1をスウェリング率という特性パラメータによって特定するという構成について着想を得る前提ないし動機付けがなく,また,引用発明1及び本件補正発明6が属する,紙を含む製造材料からなる容器の技術分野において,本件優先権主張日当時,スウェリング率を特定することが技術常識又は常套手段であったということもできない。 よって,引用例1に接した当業者は,引用発明1をスウェリング率という特性パラメータによって特定し,もって本件補正発明6のスウェリング率に関する特性パラメータの構成を容易に想到することができたとはいえ」ないと判断しました。

本判決は、新規事項の追加か否かの判断について、明細書の全ての記載を総合して判断した事例であるとともに、引用例1について、主引例適格性を否定した事例としても参考になるものと思われます。

 


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