マルチ商標審取
平成23年(行ケ)第10207号
請求棄却
裁判所の判断は9ページ以下。
争点は本願商標が商標法3条1項3号(品質等表示)及び4条1項16号(品質誤認)に該当するか否かです。
本判決は、まず、商標法3条1項3号(品質等表示)の該当性について、「本願商標と読みを同じくする「マルチタッチ」又は綴りを同じくする「Multi-Touch」の文字は,遅くとも平成15年(2003年)までには,我が国と米国の複数のタッチパネル等の開発者によって,複数の指でタッチパネル等の機器に触れることによる入力・操作方式を示すものとして使用されていたのであり,そのような入力方式に対応するタッチパネルが原告の「iPhone」等に採用されたことにより一般にも注目され,本件審決時までには,上記の入力方式を示す用語として用語辞典等にも収録され,かつ,パソコン,タッチパネル,スマートフォン等の各種商品について, これらの商品を製造する会社はもとより,出版社や新聞社等においても,上記の入力方式を示す用語としての使用が広がったことが認められる。そうであれば,「マルチタッチ」を欧文字で表記した本願商標に接した上記商品の取引者,需要者は, 上記の入力方式を意味するものとして理解するのであって,自他商品の識別機能を有しない」と述べた上、「そのような本願商標を,その指定商品中,上記の入力方式を採用したパソコン等に使用するときは,商品の品質,機能を表示するものであるから,商標法3条1項3号に該当する」判断し、さらに,本願商標を,4条1項16号(品質誤認)の該当性について、「その指定商品中,上記の入力方式を採用しないパソコン等に使用するときは,これらの商品が上記の入力方式を採用したものであるように品質について誤認を生ずるおそれがあるから,商標法4条1項16号に該当する」と判断しました。
また、原告の主張に対して、「表記は別として「マルチタッチ」の語が一般に広まったことについて,原告による「iPhone」や「iPod touch」の発表・発売が引き金になっていることは否めないにしても,そもそも,パソコンやそのディスプレイ等の商品分野にいて,「タッチパネル」や「タッチペン」等の語が用いられてきたように,「タッチ」の文字は,画面に接触することによる入力方式やそのような入力方式を採用した機器を意味するものとして使用されてきたのであって,このような「タッチ」と多数を意味する「マルチ」の文字を組み合わせた「マルチタッチ」が,通常の認識として,画面に数回又は複数接触することによる入力方式等を意味するものと把握される可能性があることは否定できない。加えて,上記認定のとおり,「iPhone」等の発表・発売の数年以上前から既に,複数のタッチパネル等の開発者により,公的に用いられる特許出願に係る公報において,「マルチタッチ」の文字が,複数の指でタッチパネル等の機器に触れることによる入力・操作方式を示すものとして使用されていて,特段の定義付けがなく理解されているのであるから,原告の上記主張は,採用することができない」と判断しました。
本件は、商標の自他識別能力に対する判断を基礎として、商標法3条1項3号及び4条1項16号の該当性について判断した事例として参考になります。
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