本年5月6日、総理大臣から中部電力に対して、浜岡原発の運転停止要請がなされ、大きな波紋をよんでいる。
論点は二つだ。
第1は、浜岡原発の安全性である。一連の原発訴訟の判決によると、原発の安全性とは絶対的安全性ではなく、相対的安全性であるとされてきる。つまり、起こりえる最悪の事態に対しても、原発事故による災害発生の危険性を社会通念上無視できる程度に小さなものに保つことが「安全」の意味であり、およそ抽象的に想定可能なあらゆる事態に対し安全であることまで要求するものではないということだ。技術には危険がつきものであるから、この考え方自体は正しい。しかし、3.11以降、許容できるリスクの内容・程度についての「社会通念」が変化した可能性があり、この点の議論が必要だ。
第2は、「要請」に法的根拠がないことである。僕は、ツイート上で、この「要請」が「原災法」に基づくものと構成できないかという問題提起をしたが、結論は無理ということになった。報道によれば、政府も法的根拠がないことを認めているらしい。他方、この「要請」は、「民間団体の要請とは異なり、総理大臣としてなされたものであり、実質的には「命令」といえる。そうとすれば、法律に基づかない命令が出されたことになり、これは、行政の法律的適合性という近代法の理念に反する事態である。もはや、日本は法治国家とはいえない。
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