知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

「最高裁の暗闘」を読む(3)

2011-01-23 09:43:00 | 知的財産制度

今回は、最高裁と世論との関係について書きます。

同書の142ページ以下に、最高裁が、行政処分の取消しを積極的に認容した東京地裁の判決(裁判長の名前から藤山判決とよばれる)についてどのように対応したかが記載されています。

その中の一つが、林試の森公園事件です。これは、林試の森公園の拡張に関して、隣に官舎があるにもかかわらず、これを温存して民有地を収用した行政処分の違法性が争いになった事件です。

この審議の過程で、滝井元判事が、「公務員宿舎のあり方に批判が出ている時代に、こういうことでいいんだろうか」と考えられたそうです。そして、うよう曲折ののち、高裁判決の取消し・差し戻しという結論に至っています。

翻ってみれば、法曹出身の最高裁判事は最優秀な人たちであり、彼らが社会の動きに敏感なのは当然ともいえます。法律の本質を考えれば明らかですね。

有名な在外選挙権国賠訴訟当時の最高裁調査官で後に最高裁判事になられた近藤崇晴元判事も、「社会と人々の心の動きを鋭敏にキャッチできるような感性を研ぎ澄ましたい」として、年間200冊の読書をされていたそうです。

ロクラク・まねきTVに関していえば、インターネットの持つ社会的意義についての最高裁判事の理解が結論に影響したとも考えられます。チュニジアのサイバー革命がもう少し早ければ、反対意見やトーンの異なる補足意見がついたかもしれません。


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