職務発明の議論を概観すると、従業員の利益・動機付けがフォーカスされており、企業の利益・動機付けが無視されているように思える。
オリンパス最高裁判決によれば、職務発明規定は、従業員等と企業の利益を調整するものであり、企業の利益・動機付けを十分に考慮する必要がある。
この点、動機付けに関しては、法と経済がの観点から、「通常の議論で見落とされがちなポイントとしては、使用者である企業側にも同様のインセンティブ問題が存在している点である。・・・研究開発に関するインセンティブは企業の側に対しても与える必要がある」との指摘がある(柳川「職務発明」:法と企業行動の経済分析)。
また、企業の利益については、、労働法から、「企業は発明に対して多額の投資を負うともにリスクを背負い・・・発明従業員のみに高く報いることは、企業や一般従業員の利益に反し」という指摘がある「土田「労働契約法」627頁柱223」。
職務発明に関する議論は、立法論を含め、これらの指摘を踏まえてなされるべきことである。
なお、柳川先生の論文については、285頁以下の指摘も重要であるが、この点は別稿に委ねる。
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