知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

職務発明規定改正条文案

2014-11-26 20:39:41 | 職務発明

職務発明規定改正条文案を考えてみました。

1項:使用者、法人、国又は地方公共団体(以下「使用者等」という。)は、従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員(以下「従業者等」という。)がその性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至つた行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明(以下「職務発明」という。)について、特許を受ける権利を有する。
2項:従業者等は、職務発明を完成したときは契約、勤務規則その他の定めに(以下「職務発明規定等」という。)に基づき相当の報奨を受ける権利を有する。
3項:職務発明規定等において前項の報奨について定める場合には、その内容を決定するための基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況、策定された当該基準の開示の状況、当該基準に基づく報奨の内容の決定について行われる従業者等からの意見の聴取の状況等を考慮して、その定めたところにより報奨を与えることが不合理と認められるものであつてはならない。本項に定める協議において、過半数の従業員等からの明示の反対の意思表示がない限り、基準の策定は合理的になされたものとみなすものとする。
4項:第2項の報奨についての定めがない場合又はその定めたところにより報奨を与えることが同項の規定により不合理と認められる場合には、従業員等は相当の報奨金の支払を受ける権利を有するものとし、当該報奨金の額
は、その発明の技術的価値、発明者の特段の努力の有無及び内容、その発明に関連して使用者等が行う負担及び貢献並びに従業者等の処遇その他の事情を考慮して定めなければならない。

この建付けは、2項に基づく相当の報奨請求権は、職務発明規定等に基づくものとする一方、4項に基づく相当の報奨金支払請求権は、法定のものとする点に特徴があり、これにより、産業界、労働界、日本商工会議所のいずれの立場にも配慮したものとなっています。
すなわち、第1に、適正な手続により策定された職務発明規定等に基づき報奨が与えられる場合(=当該報奨の付与が合理的な場合)には、法定の報奨金支払請求権は発生しないとすることにより、司法による介入に消極的な産業界の立場に配慮しています。
第2に、職務発明規定がない場合又はその定めたところにより報奨を与えることが不合理な場合には、法定の相当報奨請求権が発生するとすることにより労働界に立場に配慮しています。
第3に、職務発明規定等を義務づけないことにより、負担の増加を嫌う日本商工会議所の立場にも配慮しています。

以上


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