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知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

飲料用保持パット審取

2013-03-27 22:16:03 | 最新知財裁判例

1 平成23年(行ケ)第10365号審決取消請求事件
2 本件は、拒絶査定不服審判請求不成立審決の取消を求めるものです。(不服20093 本件の争点は進歩性の有無です。
4 
4-1 本判決は、「チョコレート粉末のような可溶性物質の場合に,パッケージの上面又は底面の一方が,可溶性物質を透過せず,他方が可溶性物質を透過させないが,溶解された可溶性物質を透過させるものであることは自明である」と述べ、「引用例2に記載された発明は,「可溶性物質を提供するための飲料パッケージであって,前記可溶性物質を透過させない上面又は底面のいずれか一方と,可溶性物質を透過させないが,溶解された可溶性物質を透過させる上面又は底面の他方を有し,使用されるときに一様に配分される水が流れる上面と底面の間に,均一に配分された可溶性物質が収容された飲料パッケージ」であると認定した上で、「引用発明は,カートリッジ1内の抽出物質5をより均等に分散させるものであり」,「引用例2に記載された発明は,抽出可能成分や可溶性物質がパッケージ内で均一に配分されていることを前提とするものである」ことから,引用発明に引用例2に記載された発明を適用し,引用発明を可溶性物質を提供するためのパッドとし,可溶性物質を透過させない上側シートと可溶性物質を透過させないが溶解された前記可溶性物質を透過させる底側シートとするとともに,パッドが可溶性物質を溶解するために適応され,前記可溶性物質のみを含有しているパッドとすることは,当業者が容易に想到し得た事項であるといえる」と判断しました。

4-2
本判決は、原告の「本願補正発明が水溶性物質を溶解することができる割合の大きいパッドを提供することを目的としているのに対し,引用発明は可溶性物質の溶解に伴う凝集物や塊の発生が問題とならない発明であり,引用例2に記載された発明も凝集物や塊の現象や除去の問題点を教示していないから,両発明を組み合わせる動機付けはない」旨の主張に対し、「引用発明は,内部セパレータの分散構造がカートリッジ1内の抽出物質5をより均等に分散させるものであり,引用例2に記載された発明も,抽出可能成分や可溶性物質が均一に配分されていることを前提とするものであるから,引用発明に引用例2に記載された発明を適用する動機付けはある」と判断しました。

4-3
本判決は、原告の「本願補正発明は,引用例2に記載された発明よりもはるかに優れた可溶性物質の改善された溶解性を示すものである」との主張に対し,「引用発明の抽出物質を可溶性物質に代えて適用すれば,可溶性物質は,引用発明のセパレータによって均等に分散されて配置されることになる。したがって,本願補正発明における可溶性物質の溶解性は,引用発明及び引用例2に記載された発明から当業者が予測し得る程度のものにすぎない」と判断しました。

5 本判決は、課題の共通性以外の部分を根拠として動機付けを肯定し、進歩性を否定した一事例として参考になるものと思われます。

以上


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