知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

電力システム審取

2012-03-11 14:25:28 | 最新知財裁判例

電力システム審取
平成23年(行ケ)第10241号 審決取消請求事件
請求認容
裁判所の判断は11頁以下
本件は、拒絶査定不服審判不成立審決に対する取消しを求めるものです。
争点は29条2の該当性の有無です。
本判決は、「特許請求の範囲の請求項1記載の「電力需給線路」は,従来の電力系統に拠らない電力システムを構成し,各「電力需給家」が備える「電力需給制御機器」を接続するものであり,各「電力需給家」において,電力の不足,余剰が生じた場合には,「電力需給制御機器」がこれを判断して電力を「受け取り」又は「渡し」,電流・電圧等の整合を行うが,「電力需給線路」を介して電力の移動が行われるものであることが認められる」と認定した上で、「本願補正発明における,電力需給家の複数が夫々の電力需給制御機器を相互接続するための「電力需給線路」は,「従来の電力系統」(図8が示すような,大規模発電所を頂点とし需要家を裾野とする「放射状系統」を基本とする広域かつ大規模な単一システムを前提とする電力設備)を排除しているものと解すべきである」と述べる一方、先顔発明については、「電力需要家間での電力を送電し受電する際の具体的な制御や必要となる電圧等の整合に係る制御についての具体的な記載はない。引用例の図5(別紙図面の「引用例の図5」のとおり。)には,先願発明の「制御装置」(本願補正発明の「電力需給制御装置」に相当する。)は,「通信網」とは接続されているが,「送配電線網」とは接続されていない様子が明確に示されている」と認定した上で、「先願発明では,「既存の系統を利用することなく,別個に送電及び受電を行うための技術的構成」は示されていないというべき」と述べ、結論として、「本願補正発明の「電力需給線路」は,従来の電力系統でないとともに「電力需給制御装置」とも区別されているのであって,電圧等の整合を行うための構成を含んでいないのに対して,先願発明における「送配電線網」は,従来の電力系統として変電所等の電圧等の整合を行うための構成を示すにとどまり,これを超える構成を示すものではないから,両者が相当するということはできない。 そうすると,本願補正発明における「電力需給線路」は,「従来の電力系統」を含まない点において,先願発明の「送配電線網」と相違する。本願補正発明と先願発明に相違点は認められないとした審決には誤りがあるというべきと判断しました。
本判決は、事実認定の重要性を示すものとして参考になるものと思われます。


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