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知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

化粧品容器用侵害事件判決

2013-10-22 13:56:25 | 最新知財裁判例

化粧品容器用侵害事件判決

大阪地方裁判所
平成23年(ワ)第7674号
平成25年01月10日
1 事案の概要
1-1 概要
本件は、考案の名称を「化粧品容器用漏れ止め構造」とする実用新案第3156963号の実用新案権(以下「本件実用新案権」という。)を有する原告が、被告による別紙物件目録記載の物件(以下「被告製品」という。)の製造販売等が本件実用新案権を侵害すると主張して、被告に対し、実用新案法27条1項、2項に基づき、被告製品の製造販売等の差止め及び廃棄等を求めると共に、実用新案権侵害の不法行為に基づき、損害賠償金1億3200万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成23年6月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1-2 考案
考案の名称 化粧品容器用漏れ止め構造
本件考案1は、以下の構成要件に分説することができる。
A:本体と、ブラシロッドと、ビンと、を含む化粧品容器用漏れ止め構造であって、
  B:前記本体は、収容空間を有し、前記収容空間には、電源ユニットと、前記電源ユニットと電気的に連接するモータと、連結具と、が設けられ、
  C:前記連結具は、前記本体の内部に回動可能に設けられ、
  D:前記モータに駆動可能であり、
  E:前記ブラシロッドは、一端が前記連結具と同軸し前記連結具に連結され、他端にブラシヘッドが設けられ、
  F:前記ビンは、液体収容チェンバーと、前記ビンの一端に設けられる開口と、を有し、前記ブラシロッドは前記開口を経由して前記液体収容チェンバーに挿入される一方、
  G:前記ブラシロッドに密封ブッシュが設けられ、
  H:前記本体と前記ビンを結合するときには、前記密封ブッシュの前縁が前記開口に密着されることを特徴とする、化粧品容器用漏れ止め構造。
本件考案3は、本件考案1に以下の構成要件が追加されたものである。
構成要件J「前記本体の側面にレールが設けられ、前記レールにスイッチが摺動可能に設けられ、前記スイッチは前記レールに沿って摺動し、これにより、前記スイッチは前記電源ユニットのオン・オフを切替えることができることを特徴とする、請求項1に記載の化粧品容器用漏れ止め構造」。

3 裁判所の判断
本判決は、構成要件Jについて、「乙20考案には、「本体」、「スイッチ」、「電源ユニット」に相当する蓋体(1)、ロータリ式スイッチ(2)及び乾電池(3)が開示されている。そして、乙20考案には、ロータリ式スイッチ(2)が、乾電池(3)のオン・オフを切り替えることができることが開示されている。一方、乙20考案では、ロータリ式スイッチ(2)が、蓋体(1)の側面に設けられたレールに摺動可能に設けられており、レールに沿って摺動するか否かは明らかではなく、以下の相違点が存する。
  相違点: 本件考案2は、スイッチが、本体側面に設けられたレールに摺動可能に設けられており、レールに沿って摺動する構造を有するのに対し、乙20考案は、ロータリ式スイッチ(2)の配設態様が明らかではない点。」と認定しつつ、上記相違点に係る本件考案2の構成は、電動マスカラにおいて、本件実用新案登録出願以前において採用されていた周知技術と認められるのであって(乙22 24)、乙20考案に当該周知技術を適用することについて、困難となるような事情も認められない」と判断しました。

4 検討
本判決は、「スイッチが、本体側面に設けられたレールに摺動可能に設けられており、レールに沿って摺動する構造」が周知技術であること自体から動機付けを肯定していますが、単に周知技術というだけではなく、慣用技術であることを動機付けの根拠としているものと推測されます。

以上


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