知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

スクレーバ審取

2013-01-17 16:53:35 | 最新知財裁判例

1 平成24年(行ケ)第10006号審決取消請求事件
2 本件は、無効審判請求成立審決の取消しを求めた訴訟です。
3 本件の争点は,進歩性の有無です。
4 
4-1
本判決は、本件発明1及び甲2発明の内容を認定した上で、「本件発明1のようなろ過システムに係る技術分野の当業者であれば,被処理物が食品原料であるかどうか,被処理物から分離された液体を採集して利用することを目的としているかどうかにかかわらず,脱水処理装置の技術分野における技術の適用を試みるであろうことは容易に想像される。この意味において,本件発明1のようなろ過システムに係る技術分野と,甲2発明の脱水処理装置や甲1発明の濾過式脱水圧搾機に係る技術分野とは,それぞれの当業者が互いに他方の技術の適用を試みるであろう程度の技術分野の関連性が認められるということができる」と判断し、「甲2発明の被処理物については,水分が除去された後の固形分はもとより,被処理物中の水分も廃棄処理され,食品として利用されることは予定されていないものの,醸造施設におけるビール,粕,モロミその他,食品製造施設における食肉,水産物,果実等の加工食品も被処理物の対象としていることからすると,甲2発明において,食品原料を被処理物とし,この被処理物から分離された液体及び固体を採集して利用する程度のことは,当業者にとって格別困難なこととはいえない」と結論づけました。

4-2
続いて、本判決は、「甲1発明は,フィルタエレメントの水切孔の目詰まり防止という点で,甲2発明と共通の技術課題を有しているといえる」と認定した上、「甲2発明の水切孔の目詰り防止手段として,洗浄水の噴射による手段に代えて,甲第1号証記載の清掃用ブレードによる拭き取り手段を適用し,「スクリュ状羽根の外周端面全域に沿って,前記フィルタエレメントと摺接し,相違点3に係る本件発明1の構成,すなわち,「スクリュ状羽根の外周端面全域に沿って,前記フィルタエレメントと摺接し,スクリュ状羽根の前後に隙間を開けずに設けたスクレーパ機構を設けて前記フィルタエレメントの周面に付着する濾カスの固形分を引掻除去できるようにしてなる」スクレーパ濾過システムとすることは,当業者であれば必要に応じて適宜なし得るものである」と結論づけました。

4-3 
さらに、本判決は、原告の「甲1発明のコイルばね式清掃用ブレードは,甲2発明のようにケーシングの外側から水切孔に圧力を加え固形物をケーシング内部に落下させるというものではなく,内側表面に付着した固形物を切り剥がしこすり取ることにより,濾過式脱水用媒体の内側表面から固形物を拭き取り清掃をするというものであるから,甲2発明の外部から圧力を加える手段から,甲1発明の内部からこすり取るという解決手段を想到することは,当業者といえども容易であるとはいえない」との主張に対し、「甲2発明の外部から圧力を加える手段と,甲1発明の内部からこすり取るという手段とは,フィルタエレメントの水切孔の目詰まり防止という点で共通の機能を有するものであるから,甲2発明の外部から圧力を加える手段を,甲1発明の内部からこすり取るという解決手段を想到することは,当業者にとって容易であるといえる」と判断しました。

5 本判決は、「当業者であれば必要に応じて適宜なし得る」ことを容易想到性を肯定する理由の1つとし、また、機能の共通性を理由として技術要素の置換容易性を肯定した事例として参考になると思われます。


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