エジプトの“独裁者”であるムバラク大統領が、
昨日の百万人を超える国民の運動に“内心恐怖を感じて?”
今年9月の任期満了を待って、大統領の職を退任することを発表。
マスメディアは「辞任表明」と評しているが、引続き大統領に選出される
可能性が著しく低くなってきたことから、今期限りの任期を全うする
ことにしたまでの話であり、本来の「辞任」や「辞職」とは異なる。
82歳という年齢を考えれば、大統領を続けても任期中に老衰死する
可能性も無きにしもあらずで、言わば「停年退職」を表明したようなもの。
反政府勢力が、これを「良し」とするはずが無いのは明らかな話しである。
2月2日には、ムバラク“支持派”と反政府勢力の間で『抗争事件』
が発生したようである。
反政府デモ、大統領派と衝突 エジプト、対立深刻化
(共同通信) 2011年2月2日(水)23:09
2日、エジプト・カイロ中心部のタハリール広場で、
衝突する大統領支持派(下)とデモ隊(AP=共同)
しかし、ムバラク“支持派”は政府が動員している疑いが濃いらしい。
アフリカ・中東の“先進国”としてアメリカの物心両面の強い支持の下
急速な近代化を図って来たので、カイロなど中心都市には高層ビルが溢れ
近代都市とはなっているが、ちょっと裏道に入ると今もスラムがあるように
貧富の格差はますます広がっており、人口の過半数と言う若者の失業が
2・3割にも及ぶ不安定社会と化していると言う。
そういう背景がある中で、SNSなどインターネットを活用する若者が、
チュニジアの事態をいち早くネットに流したものだから、チュニジアの
10分の1の日数も掛からずに、ほぼ1週間で、ここまで運動を拡大
できたようである。
エジプトでは、IT先進国化を目標としていたため、他の中東諸国と
比べると、若者へのIT普及率は高かったことも運動の速度を速めた。
その上、事態を憂えた政府側が、IT回線を規制した(遮断した)ことが
若者の怒りを一層拡大したようである。
NHK報道では、インターネット専用回線が使えなくなった若者は、
旧来の電話回線モデムでネットワークの復旧を行っているとのこと。
国連事務総長も、アメリカ大統領も、イギリス首相も ムバラクを
見放し、早期の政権移行を求めたようである。
早期「退陣」しか、ムバラク大統領と政権幹部に残された道は無い
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エジプトのムバラク大統領が9月の辞任表明、予想されるシナリオ
(トムソンロイター) 2011年2月2日(水)15:27
[カイロ 2日 ロイター]
エジプトのムバラク大統領は1日、テレビを通じて演説し、9月の大統領選での再選は目指さないが、円滑な権力の移譲に向けて任期を全うする方針を表明した。
ただ、同大統領は82歳。エジプトでは約30年にわたって独裁支配を続ける同大統領の退陣を求める大規模な反政府デモが続いており、大統領の方針表明に対して、カイロ中心部のタハリール広場に集まった市民からは、即時辞任を要求する声が上がっている。
以下は、今後予想される展開に関する質問と回答。
<ムバラク政権は9月まで持続するか>
可能性は非常に低い。デモ参加者全員を団結させているのは、大統領の即時辞任の要求だ。
大統領の演説を受け、市民は「われわれは立ち去らない。立ち去るのはムバラクだ」とシュプレヒコールを繰り返した。1日には約100万人が抗議に参加した。これまでの反政府デモは参加者が数百人程度だったが、1月25日から続く今回のデモは、国家機能を麻痺させ、大統領の地位を揺るがすほど大きな規模となっている。
ただ、混乱を深める新たな要因として、大統領支持派の出現がある。1日のムバラク大統領の演説から数時間後、大統領支持派による小規模なデモが起こり、国営テレビはこれをすぐに取り上げた。強硬な支持者によって政権移譲が容易には進まない可能性が生じている。
今後の動向はエジプト軍の対応にかかっている可能性がある。軍は、デモ参加者の要求は「正当」だとし、武力を行使しないと表明している。警察によるデモ隊の強引な取り締まりができない現状で、軍に選択の余地はない。大統領支持派と反対派が衝突した場合、軍は難しい状況で厳しい選択を迫られる可能性がある。現時点では、軍は反政府派に味方したいようだ。
<ムバラク大統領退陣後は>
ムバラク大統領が退陣させられた場合、大まかには2つの展開が予想される。一つは、引き続き軍部による管理のもと、ムバラク大統領が最近指名したスレイマン副大統領、同氏が適任でなければ別の指揮官が大統領に就任する展開。
もう一つは、選挙の準備が整い、完全な民政が樹立されるまで、移行政府が政府機能を代行する展開。最初はおそらく軍との緊密な連携が必要になる。
<軍は権力を保持できるか>
抗議デモの中核メンバーは、スレイマン副大統領などムバラク大統領に近い人物は受け入れられない、と主張している。
反政府派の勝利を意識し、次第にまとまりつつある野党勢力の立場はそれほど明確ではない。野党側はスレイマン副大統領が大統領に就任することに満足しないとみられるものの、一部では、自由選挙を準備するための移行期間の初期に設立される評議会のメンバーにスレイマン氏の名前が挙がっている。
スレイマン氏が適任とされない場合には、エジプト軍のサミ・エナン参謀総長が大統領となる可能性がある。ただ、軍が米国との良好な関係を維持し、米軍から年13億ドルの軍事支援を受け続けたいならば、これはかなり大胆な人選といえる。あるシナリオでは、1985年に民衆の反乱がクーデターにつながり、軍指導者が翌年の選挙まで暫定的に国家を指導したスーダンの例にならう可能性が想定されている。
<軍以外の権力者>
エジプトの登録野党は、ムバラク政権下で弱体化、分裂あるいは譲歩を余儀なくされてきた。近年生まれた反政府グループは、野党よりもはるかに素早く動き、ムバラク大統領の支配が弱まったとみて即座に集会を開いた。
また、エルバラダイ前国際原子力機関(IAEA)事務局長や知識人のアフマド・ズウェイル氏など、影響力のある人物も台頭している。2氏はノーベル賞受賞者。
ただ、彼らの共通の政治的基盤がムバラク政権打倒という目標を超えて拡大する可能性はなく、政府の政策策定など詳細事項をめぐってはグループ化した途端に分裂する可能性がある。
エジプトの民衆を取り込んだ全国的組織を唯一形成するのがイスラム主義組織のムスリム同胞団だ。この組織は長年にわたり、国の保安当局から弾圧を受けてきたが、依然手ごわさを維持している。ただ、どれほど手ごわいかは疑問だ。アナリストによると、ムスリム同胞団に対する国民の支持率は20─40%。エジプトではこれまで自由選挙がなく、信頼できる世論調査も実施されなかったため、実際は誰も分からない。
とはいえ、野党勢力が組織化を急ぐ一方、ムスリム同胞団は、政治空白を埋められるほど大量の支持者を動員することができる。
ムスリム同胞団はすでに、多元的で民主的なイスラム国家というビジョンについて、国内で多数派のイスラム人口の支持を得ることに狙いを定めている。
ムスリム同胞団はいま、政権に就く準備ができたと感じていない可能性、あるいは政権を望んでいない可能性がある。
今回の大規模なデモを受け、次の政府は膨大な障害に直面し、応えるべき期待も高いとみられる。政権がつまづく可能性も高い。新政府は企業の信頼獲得や雇用創出に取り組むだけでなく、中東和平プロセスの進展に尽力する必要がある。また、国内外から非難されているガザの事実上の封鎖への対応も決定しなければならない。これらはムスリム同胞団がいま引き受けたくない仕事かもしれない。