ウォーホール左派

今日も作詩、明日もまた、本格詩人のブログ。

無言歌 安藤元雄

2018-03-04 14:23:24 | Weblog
無言歌(安藤元雄)
「戦後詩によるメーソン殲滅作戦」

おれの眼に属するおまえの塔
おれの下に属するおまえの枝
しかしおまえの葉はもうささやかない
葉は裏切る
おれの手のひらに残ったおまえの顔の鋳型
それからおまえの鱗

それでいてなおもおまえは沈む あの暗い
漏斗の底へ
何ものをも濾し残さない砂利の間へ
そして おまえの唇の上に夜がおりる
実りただれた野が ただ一閃(いっせん)の
光の下で溶け崩れるように

おまえはさらすだろう 或る日
乾ききった岸辺に おまえのもろい石灰質を
そのときおれは見るだろう 長い長い日ざしの中で
硬直したものたちのゆるやかな白い流れを
何もかもがその場から立ち去ってしまったわけではなく
おまえはおまえのしずくの一粒のために渇くだろう