近江国(現滋賀県)には、観音寺城、安土城、大溝城をはじめ城跡・山城跡が沢山ある。一時期は、ウォーキングの同好会や近江の山城跡探訪の講座などに参加して、山城跡等を巡っていた。近江には、彦根城が現存する。彦根城は学生時代から幾度か探訪してきているが、天守まで昇ったもののその天守の構造を深く考えたことはなかった。いままでは、山城を含め、城の縄張りの方に関心があった。
山城跡は単独での探訪はなかなか難しい。若い頃は考えもしなかったが、もはやそれは蛮行と思う年齢になっている。現存する近世城郭を主体に探訪するなら、一人旅も可能。そういう意味でも、山城跡から現存する城、平城跡に意識が移ってきている。そんなタイミングで本書を知った。
本書は2017年11月に刊行された。
「城の科学」というタイトルに惹かれたことと、裏表紙の案内文中「姫路城、松本城、松江城、彦根城、犬山城を中心に、その構造や素材、装飾を解説していきます」という末尾の文に彦根城と姫路城が入っているので関心を持った。訪れた城名が入っているので城自体をイメージしやすくなる。姫路城を訪れた時は、平成の大修理の最終段階だったので、城内を巡ったが天守探訪とは縁がなかった。再訪したいと思っているので、ストレートに取りあげられているなら役に立つ。そんな思いが読む動機となった。
本書は副題にもある通り、天守に焦点を当てる形で城を築造する技術と城の建築構造を科学的な視点で解説している。城郭の縄張り図という側面はほぼ対象外である。城のレイアウトということでは、天守の構成という視点で、複合式・連結式・独立式・連立式という構成の違いに触れて、天守を説明する範囲に留まる。
天守についての知識は、本書でかなり詳しく学ぶことができて、役立つと思う。
まず、本書の構成をご紹介しておこう。
第1章 城と天守の歴史
第2章 天守のつくり方 ~木造建築としての特徴~
第3章 天守の発展 ~形式と構造の変化~
第4章 天守の美と工夫
第5章 姫路城の漆喰 ~よみがえった純白の輝き~
第6章 松本城天守の漆の秘密 ~日本で唯一の漆黒の天守~
第7章 丸岡城の最新調査・研究事例 ~科学的調査で国宝をめざす~
第8章 松江城の新知見 ~明らかになった独自のメカニズム~
第9章 松本城・犬山城・彦根城天守の謎 ~天守に隠された変遷~
城の築造・構造を科学するという観点では、この章立てでお解りいただけるとおり、第2章~第4章が基礎知識を学ぶ中核になる。木造建築に関わる専門用語を使っての解説なので、用語を学び身近なものにできる反面、初めて読むには読みづらさがあるとも言える。図版が数多く使われているので、本文の通読にはかなり役に立つ。
私は章順に読み進めたのだが、第2章~第4章の途中で、他のジャンルの本に気移りしてしばし中断してしまった。本書に戻ってきてからあとは一気に読み進めたのだが。
第5章以下は、お城の事例紹介でもあり、トピックスになる内容が盛り込まれているので、楽しみながら読める。それぞれの城の特徴がわかっておもしろい。
第1章の「城と天守の歴史」を読んでから、第5章以下のお城の事例を通読して、第2章~第4章の基礎知識を読み進めるというのも、一つの読み方かもしれないと思う。
本書への誘いとして、幾つかの特徴にふれておきたい。
*全国各地に現存する天守、再建天守のある城、城跡等の全景や部分写真を数多く解説の流れに沿い掲載している。章毎にその掲載写真の城名を抽出すると次の通り。章ごとでの重複はその城への言及の広がりを意味する。
第1章:岡山城、広島城、会津若松城、盛岡城、姫路城、彦根城、松江城、丸亀城、
弘前城、松山城、白河小峰城、備中松山城、犬山城、松本城、名古屋城、
大阪城、洲本城、大洲城、掛川城
第2章:安土城、松江城、松本城、姫路城、丸亀城、犬山城、彦根城、丸岡城
第3章:丸岡城、丸亀城、松本城、熊本城、姫路城、松本城、高知城、犬山城
第4章:姫路城、彦根城、松本城、松山城、弘前城、犬山城、岡山城、金沢城
備中松山城、丸亀城、松江城、熊本城、丸岡城、
*第1章に「金箔瓦が出土した、豊臣政権下の城一覧」および「天下普請の城と大坂包囲網」の両地図が掲載されている。
*木造建築の建物の様式、建築構造の部位名のイラストが掲載されていてわかりやすい。 併せて、4城の断面図が掲載されている(松本城、丸岡城、犬山城、姫路城)
*本書の末尾に、「現存12天守ガイド」が掲載されている。天守全景写真とともに、プロフィールと見どころの解説が見開きの2ページでまとめられている。
現存天守のある城を列挙しておこう。私は本書で初めて12天守ということを知った。(*)を付けた城は国宝に指定されている。
姫路城(*)、松本城(*)、彦根城(*)、松江城(*)、犬山城(*)
弘前城、丸岡城、備中松山城、松山城、丸亀城、宇和島城、高知城
これからは近世の城郭に重点を移して、城探訪をしてみたいと思っている。
ご一読ありがとうございます。
山城跡は単独での探訪はなかなか難しい。若い頃は考えもしなかったが、もはやそれは蛮行と思う年齢になっている。現存する近世城郭を主体に探訪するなら、一人旅も可能。そういう意味でも、山城跡から現存する城、平城跡に意識が移ってきている。そんなタイミングで本書を知った。
本書は2017年11月に刊行された。
「城の科学」というタイトルに惹かれたことと、裏表紙の案内文中「姫路城、松本城、松江城、彦根城、犬山城を中心に、その構造や素材、装飾を解説していきます」という末尾の文に彦根城と姫路城が入っているので関心を持った。訪れた城名が入っているので城自体をイメージしやすくなる。姫路城を訪れた時は、平成の大修理の最終段階だったので、城内を巡ったが天守探訪とは縁がなかった。再訪したいと思っているので、ストレートに取りあげられているなら役に立つ。そんな思いが読む動機となった。
本書は副題にもある通り、天守に焦点を当てる形で城を築造する技術と城の建築構造を科学的な視点で解説している。城郭の縄張り図という側面はほぼ対象外である。城のレイアウトということでは、天守の構成という視点で、複合式・連結式・独立式・連立式という構成の違いに触れて、天守を説明する範囲に留まる。
天守についての知識は、本書でかなり詳しく学ぶことができて、役立つと思う。
まず、本書の構成をご紹介しておこう。
第1章 城と天守の歴史
第2章 天守のつくり方 ~木造建築としての特徴~
第3章 天守の発展 ~形式と構造の変化~
第4章 天守の美と工夫
第5章 姫路城の漆喰 ~よみがえった純白の輝き~
第6章 松本城天守の漆の秘密 ~日本で唯一の漆黒の天守~
第7章 丸岡城の最新調査・研究事例 ~科学的調査で国宝をめざす~
第8章 松江城の新知見 ~明らかになった独自のメカニズム~
第9章 松本城・犬山城・彦根城天守の謎 ~天守に隠された変遷~
城の築造・構造を科学するという観点では、この章立てでお解りいただけるとおり、第2章~第4章が基礎知識を学ぶ中核になる。木造建築に関わる専門用語を使っての解説なので、用語を学び身近なものにできる反面、初めて読むには読みづらさがあるとも言える。図版が数多く使われているので、本文の通読にはかなり役に立つ。
私は章順に読み進めたのだが、第2章~第4章の途中で、他のジャンルの本に気移りしてしばし中断してしまった。本書に戻ってきてからあとは一気に読み進めたのだが。
第5章以下は、お城の事例紹介でもあり、トピックスになる内容が盛り込まれているので、楽しみながら読める。それぞれの城の特徴がわかっておもしろい。
第1章の「城と天守の歴史」を読んでから、第5章以下のお城の事例を通読して、第2章~第4章の基礎知識を読み進めるというのも、一つの読み方かもしれないと思う。
本書への誘いとして、幾つかの特徴にふれておきたい。
*全国各地に現存する天守、再建天守のある城、城跡等の全景や部分写真を数多く解説の流れに沿い掲載している。章毎にその掲載写真の城名を抽出すると次の通り。章ごとでの重複はその城への言及の広がりを意味する。
第1章:岡山城、広島城、会津若松城、盛岡城、姫路城、彦根城、松江城、丸亀城、
弘前城、松山城、白河小峰城、備中松山城、犬山城、松本城、名古屋城、
大阪城、洲本城、大洲城、掛川城
第2章:安土城、松江城、松本城、姫路城、丸亀城、犬山城、彦根城、丸岡城
第3章:丸岡城、丸亀城、松本城、熊本城、姫路城、松本城、高知城、犬山城
第4章:姫路城、彦根城、松本城、松山城、弘前城、犬山城、岡山城、金沢城
備中松山城、丸亀城、松江城、熊本城、丸岡城、
*第1章に「金箔瓦が出土した、豊臣政権下の城一覧」および「天下普請の城と大坂包囲網」の両地図が掲載されている。
*木造建築の建物の様式、建築構造の部位名のイラストが掲載されていてわかりやすい。 併せて、4城の断面図が掲載されている(松本城、丸岡城、犬山城、姫路城)
*本書の末尾に、「現存12天守ガイド」が掲載されている。天守全景写真とともに、プロフィールと見どころの解説が見開きの2ページでまとめられている。
現存天守のある城を列挙しておこう。私は本書で初めて12天守ということを知った。(*)を付けた城は国宝に指定されている。
姫路城(*)、松本城(*)、彦根城(*)、松江城(*)、犬山城(*)
弘前城、丸岡城、備中松山城、松山城、丸亀城、宇和島城、高知城
これからは近世の城郭に重点を移して、城探訪をしてみたいと思っている。
ご一読ありがとうございます。