新聞広告で数回本書のタイトルを目にし、タイトルに興味を抱き読んでみた。
アマテラスといえば、天照大神。伊勢神宮の内宮に鎮座する神。その暗号って何だろう? 素朴な好奇心・・・・。
日本神話、神道、全国に存在する神社に関心のある人には、本書で進展するアマテラスに関わる謎解きの進展を大いに楽しめる。伊勢神宮の内宮と外宮の関係。伊勢神宮と元伊勢と称される丹波国・籠神社との関係。出雲大社の存在の謎。日本のいくつかの神社で使われている六芒星の紋。日本神話に登場する神々の沿い相関関係。平安京の創設に関わる秦氏の存在と秦氏のルーツ。・・・・。この小説は、日本神話と神道、神社の領域に一歩踏み込んで行くという知的副産物が得られる。たぶん未訪の神社探訪をしてみたくなることだろう。
その上に、ユダヤ教とユダヤ民族についても基礎的な知識を得る契機になる。なぜなら、アマテラスの謎、日本の古代史の謎に、ユダヤが関わっているのではないかという光が投げかけられ、その謎解きが関わっていくのだから。
日本の古代史にユダヤが関わりを持つという論旨の書は以前から出ている。手に取ったこともある。この小説がその領域にも関係することを読み始めて気づいた。本書はその発想を一歩進め、ミステリーとして、謎解きストーリーに総合しているところがユニークである。最後まで惹きつけられて読み通すことになった。
著者プロフィールと奥書によれば、本書は、2019年3月に Amazon Kindle で発表され、2020年10月に廣済堂出版より単行本が刊行された。その後加筆修正されて、2024年3月に文庫化されている。
本書は冒頭のページに、次の一文が記されている。
「この小説における神名、神社、祭祀、宝物、文献、伝承、遺物、遺跡に関する記述は、すべて事実にもとづいている」と。これって、読者には殺し文句と言える。行ってみたい。見てみたい・・・・。
登場人物とストーリーの展開は、小説、フィクションなのだ。想像の翼が羽ばたく。
ローマ市内の観光名所や教会を推理の進展につれて飛び回り、謎解きを加速していくダン・ブラウン著『天使と悪魔』のストーリー・スタイルと同系統のおもしろさを感じた。
「プロローグ」は、天皇が即位されるにあたり、一世一代の最重要の盛儀として行われる「大嘗祭」のシーンから始まる。そこから一転して、ケンシ(賢司)・リチャーディーが早朝にニューヨーク市警察の警部からの電話でたたき起こされる。それは、ニューヨークに来訪していた彼の父・海部直彦が昨晩深夜、他殺体で発見されたという連絡だった。遺体は同行者の土岐氏と日本領事館の度会氏が確認していた。賢司の父は、急に賢司に再会したい希望をもって渡米してきていたのだ。賢司が会うのを逡巡している矢先だった。 さらに、同じ部屋で、敬虔なユダヤ教徒が同時に殺害されていたのである。警部は、殺しのプロかそれに匹敵する腕前を持つ人間の犯行と賢司に告げた。その後、敬虔なユダヤ教徒の身元は警察の調べで判明した。ユダヤ人ラビのアブラハム・ヘルマン、68歳。イスラエルでアミシャブという、ある調査機関のリーダーだった。
賢司はアメリカの大学で歴史学を専攻し、卒業後ゴールドマン・サックスに勤めていた元トレーダー。彼の父・海部直彦は籠神社の第82代宮司だった。次男だった父は、長男の夭逝により、やむなく宮司として跡を継ぐために帰国。敬虔なキリスト教徒であった賢司の母は離婚した。それぞれが再婚するという結果になった。
度会は賢司に、ズシリとした封筒を手渡す。それは海部直彦がもし自分の身に何かがあれば、これを賢司に渡してほしいと度会に託していたものだった。遺品の中には、白黒写真もあり、その裏には不思議なカタカナ文字様だが判読できない文字列が記されていた。また、賢司は警部からヘルマン氏と海部直彦が話をしているときに、ヘルマン氏が記していたというメモ用紙も入手した。そこには暗号のようなメッセージ等が列挙されていた。賢司は父の残した暗号の謎を解くために、ゴールドマン・サックスの元同僚3人の協力を得る。
旅行先のイタリアから急遽帰国した賢司の母イエナンは、写真の裏の不可思議な文字列がアラム語とわかり、内容を彼ら4人に伝えた。そして、賢司の父は、日本のタブーのために殺されたのだ・・・と賢司に告げた。
それが契機となり、3人の元同僚とともに賢司は日本を訪れ、父の死の謎と残された暗号の謎を解き明かす決意をする。これが、このストーリーの始まりとなって行く。
3人の元同僚とは、
イラージ・カーニ イラン出身のロケット・サイエンティスト
デービッド・バロン ロスチャイルド家親戚。ユダヤ系アメリカ人
ウィリアム・王 開封出身の中国人。陰謀論者 である。
賢司たちの行動というメインストーリーに対して、2つのサブストーリーがパラレルに進行していく。一つは東京の元麻布にある中華人民共和国駐日本大使館の動きである。駐大阪総領事の周領事が郭大使の承認を得てある工作活動を主導していく。それが賢司の行動に絡んでいく。
もう一つは、京都・下鴨神社の神職として勤める小橋直樹が、退職届を出してまでも真の神道を守り通さねばという信念から行動に踏み出していく。賢司の行動とどのように関わりができるのか・・先行きが想像できない形でサブストーリーが織り込まれていく。
賢司たちはラビ・コーヘンに会うために渋谷区広尾にある日本ユダヤ教団に出かけて行く。だが、元駐日イスラエル大使のデープ・ヘラーからラビ・コーヘンが先日他界したと知らされる。そして、イスラエルから来日しているラビ・コーヘンの娘、ナオミに引き合わされる。ナオミはヘブライ大学でイスラエルと日本の古代史を研究していて、賢司の父とも親しくしてもらっていたと言う。これが縁となり、このあと賢司の謎解きにナオミも加わっていく。デープ・ヘラーもまた関りを持っていく。
この小説が比較的親しみやすいのは、ストーリーの展開プロセスに関連する様々な図像や画像、略図、系譜図などが数多く併載されていくことである。本文の叙述を理解するうえで大いに役立つ。
さて、来日後、賢司が父の死の謎と残されたメモ用紙の暗号の謎を解明するためにどこを遍歴するのか。彼らが訪れる神社名ほかを時系列で抽出してご紹介してみよう。このリストを読むだけで、興味が高まるのではないかと思う。
伊勢神宮~諏訪大社~京都・祇園祭見物~京都・木嶋神社~徳島県・剣山/洞窟~
出雲大社~丹後・籠神社、真名井神社~奈良・大神神社~奈良・大和神社~
奈良・石上神宮~伊勢神宮
また、彼らの推理のプロセスに関連し、参照される寺社情報等も数多く登場する。こちらも列挙してみよう。
東京・三囲神社、京都・広隆寺、赤穂・大避神社、徳島県・萩原墳墓群
淡路島傍にある沼島・おのころ島神社、徳島県・磐境神明神社、徳島県・宝蔵石神社
島根県・稲佐の浜、島根県の熊野大社、大分県・宇佐神宮
実に興味深い推論、暗号解読となっていく。こういうミステリーは楽しめる。
謎多き日本の古代史。聖典・経典の類がなかった神道の不可思議さ。日本神話の神々、八百万の神々の世界。・・・・・。ロマンに溢れている。
ご一読ありがとうございます。
補遺
神宮 ISE JINGU ホームページ
信濃國一之宮 諏訪大社 ホームページ
木嶋坐天照御魂神社(蚕ノ社) :「京都観光Navi」
木嶋坐天照御魂神社 :ウィキペディア
出雲大社 ホームページ
丹後一宮 元伊勢 籠神社 ホームページ
三輪明神 大神神社 ホームページ
大和神社 ホームページ
石上神宮 ホームページ
広隆寺 :ウィキペディア
八幡総本社 宇佐神宮 ホームページ
ユダヤ :ウィキペディア
ユダヤ人 :ウィキペディア
イスラエル(民族) :ウィキペディア
イスラエルの失われた10支族 :ウィキペディア
イスラエルの12支族 :「コトバンク」
日ユ同祖論 :ウィキペディア
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アマテラスといえば、天照大神。伊勢神宮の内宮に鎮座する神。その暗号って何だろう? 素朴な好奇心・・・・。
日本神話、神道、全国に存在する神社に関心のある人には、本書で進展するアマテラスに関わる謎解きの進展を大いに楽しめる。伊勢神宮の内宮と外宮の関係。伊勢神宮と元伊勢と称される丹波国・籠神社との関係。出雲大社の存在の謎。日本のいくつかの神社で使われている六芒星の紋。日本神話に登場する神々の沿い相関関係。平安京の創設に関わる秦氏の存在と秦氏のルーツ。・・・・。この小説は、日本神話と神道、神社の領域に一歩踏み込んで行くという知的副産物が得られる。たぶん未訪の神社探訪をしてみたくなることだろう。
その上に、ユダヤ教とユダヤ民族についても基礎的な知識を得る契機になる。なぜなら、アマテラスの謎、日本の古代史の謎に、ユダヤが関わっているのではないかという光が投げかけられ、その謎解きが関わっていくのだから。
日本の古代史にユダヤが関わりを持つという論旨の書は以前から出ている。手に取ったこともある。この小説がその領域にも関係することを読み始めて気づいた。本書はその発想を一歩進め、ミステリーとして、謎解きストーリーに総合しているところがユニークである。最後まで惹きつけられて読み通すことになった。
著者プロフィールと奥書によれば、本書は、2019年3月に Amazon Kindle で発表され、2020年10月に廣済堂出版より単行本が刊行された。その後加筆修正されて、2024年3月に文庫化されている。
本書は冒頭のページに、次の一文が記されている。
「この小説における神名、神社、祭祀、宝物、文献、伝承、遺物、遺跡に関する記述は、すべて事実にもとづいている」と。これって、読者には殺し文句と言える。行ってみたい。見てみたい・・・・。
登場人物とストーリーの展開は、小説、フィクションなのだ。想像の翼が羽ばたく。
ローマ市内の観光名所や教会を推理の進展につれて飛び回り、謎解きを加速していくダン・ブラウン著『天使と悪魔』のストーリー・スタイルと同系統のおもしろさを感じた。
「プロローグ」は、天皇が即位されるにあたり、一世一代の最重要の盛儀として行われる「大嘗祭」のシーンから始まる。そこから一転して、ケンシ(賢司)・リチャーディーが早朝にニューヨーク市警察の警部からの電話でたたき起こされる。それは、ニューヨークに来訪していた彼の父・海部直彦が昨晩深夜、他殺体で発見されたという連絡だった。遺体は同行者の土岐氏と日本領事館の度会氏が確認していた。賢司の父は、急に賢司に再会したい希望をもって渡米してきていたのだ。賢司が会うのを逡巡している矢先だった。 さらに、同じ部屋で、敬虔なユダヤ教徒が同時に殺害されていたのである。警部は、殺しのプロかそれに匹敵する腕前を持つ人間の犯行と賢司に告げた。その後、敬虔なユダヤ教徒の身元は警察の調べで判明した。ユダヤ人ラビのアブラハム・ヘルマン、68歳。イスラエルでアミシャブという、ある調査機関のリーダーだった。
賢司はアメリカの大学で歴史学を専攻し、卒業後ゴールドマン・サックスに勤めていた元トレーダー。彼の父・海部直彦は籠神社の第82代宮司だった。次男だった父は、長男の夭逝により、やむなく宮司として跡を継ぐために帰国。敬虔なキリスト教徒であった賢司の母は離婚した。それぞれが再婚するという結果になった。
度会は賢司に、ズシリとした封筒を手渡す。それは海部直彦がもし自分の身に何かがあれば、これを賢司に渡してほしいと度会に託していたものだった。遺品の中には、白黒写真もあり、その裏には不思議なカタカナ文字様だが判読できない文字列が記されていた。また、賢司は警部からヘルマン氏と海部直彦が話をしているときに、ヘルマン氏が記していたというメモ用紙も入手した。そこには暗号のようなメッセージ等が列挙されていた。賢司は父の残した暗号の謎を解くために、ゴールドマン・サックスの元同僚3人の協力を得る。
旅行先のイタリアから急遽帰国した賢司の母イエナンは、写真の裏の不可思議な文字列がアラム語とわかり、内容を彼ら4人に伝えた。そして、賢司の父は、日本のタブーのために殺されたのだ・・・と賢司に告げた。
それが契機となり、3人の元同僚とともに賢司は日本を訪れ、父の死の謎と残された暗号の謎を解き明かす決意をする。これが、このストーリーの始まりとなって行く。
3人の元同僚とは、
イラージ・カーニ イラン出身のロケット・サイエンティスト
デービッド・バロン ロスチャイルド家親戚。ユダヤ系アメリカ人
ウィリアム・王 開封出身の中国人。陰謀論者 である。
賢司たちの行動というメインストーリーに対して、2つのサブストーリーがパラレルに進行していく。一つは東京の元麻布にある中華人民共和国駐日本大使館の動きである。駐大阪総領事の周領事が郭大使の承認を得てある工作活動を主導していく。それが賢司の行動に絡んでいく。
もう一つは、京都・下鴨神社の神職として勤める小橋直樹が、退職届を出してまでも真の神道を守り通さねばという信念から行動に踏み出していく。賢司の行動とどのように関わりができるのか・・先行きが想像できない形でサブストーリーが織り込まれていく。
賢司たちはラビ・コーヘンに会うために渋谷区広尾にある日本ユダヤ教団に出かけて行く。だが、元駐日イスラエル大使のデープ・ヘラーからラビ・コーヘンが先日他界したと知らされる。そして、イスラエルから来日しているラビ・コーヘンの娘、ナオミに引き合わされる。ナオミはヘブライ大学でイスラエルと日本の古代史を研究していて、賢司の父とも親しくしてもらっていたと言う。これが縁となり、このあと賢司の謎解きにナオミも加わっていく。デープ・ヘラーもまた関りを持っていく。
この小説が比較的親しみやすいのは、ストーリーの展開プロセスに関連する様々な図像や画像、略図、系譜図などが数多く併載されていくことである。本文の叙述を理解するうえで大いに役立つ。
さて、来日後、賢司が父の死の謎と残されたメモ用紙の暗号の謎を解明するためにどこを遍歴するのか。彼らが訪れる神社名ほかを時系列で抽出してご紹介してみよう。このリストを読むだけで、興味が高まるのではないかと思う。
伊勢神宮~諏訪大社~京都・祇園祭見物~京都・木嶋神社~徳島県・剣山/洞窟~
出雲大社~丹後・籠神社、真名井神社~奈良・大神神社~奈良・大和神社~
奈良・石上神宮~伊勢神宮
また、彼らの推理のプロセスに関連し、参照される寺社情報等も数多く登場する。こちらも列挙してみよう。
東京・三囲神社、京都・広隆寺、赤穂・大避神社、徳島県・萩原墳墓群
淡路島傍にある沼島・おのころ島神社、徳島県・磐境神明神社、徳島県・宝蔵石神社
島根県・稲佐の浜、島根県の熊野大社、大分県・宇佐神宮
実に興味深い推論、暗号解読となっていく。こういうミステリーは楽しめる。
謎多き日本の古代史。聖典・経典の類がなかった神道の不可思議さ。日本神話の神々、八百万の神々の世界。・・・・・。ロマンに溢れている。
ご一読ありがとうございます。
補遺
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木嶋坐天照御魂神社 :ウィキペディア
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ユダヤ :ウィキペディア
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イスラエルの失われた10支族 :ウィキペディア
イスラエルの12支族 :「コトバンク」
日ユ同祖論 :ウィキペディア
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