ヨビノリ先生の電磁気学教本紹介の動画を見ていると、物理系の方にとってはマクスウェルの方程式を起点にする電磁気学の本ってのは衝撃的な視点で、クーロンの法則に始まり歴史的発展の経路に沿って学ぶことを良しとするみたいですね。
電磁気のおすすめ教科書
電磁気学の基本はめちゃくちゃ単純なんです。これは私が言い出すことではなくって、学びつくせば単純になるものでもなくって、人類が電磁気学を試行錯誤して探り続けた結果として単純な完成形にたどり着いたってことです。
たどり着かせたのはヘルツって人物で周波数の単位にも彼の名前が用いられています。統計物理学で有名なボルツマンって親父はこの完成形を見て「これは神が造った芸術だ」とのたまったそうです。
クーロンの法則から歴史的な発展に沿って学んで究極の単純な完成形にたどり着くスタイルと、電磁気学はすでに完成されているものとして基本原理を示して各現象を導き出すスタイルのどちらがいいかは物理系の方では一概に結論が出せないのではないでしょうか。
これが電気系の電磁気学の教本となると基本原理であるマクスウェルの方程式を起点に各現象を解き明かすスタイル以外にはありえないってことになります。歴史的な発展の経緯なんぞどーでもよくって、完成形があるんだからどう使いこなすかが重要になるわけですね。電磁界の基本法則が理解できるならクーロンの法則は覚えなくてもよい公式の最たるものってのも基本原理が分かっていれば容易に導出できるからです。
たった4つの基本原理。
1.磁束が変化すれば周囲に電界が生じる
2.電流が流れるか電束が変化すれば磁界が生じる
3.電荷から電束が湧いて出てくる
4.磁束は湧いて出てこない
それぞれ公式があるんですがベクトル解析を知らない人が見ると目の毒なのでやめにしときましょうw
さらに電磁界の時間変化や電流を考えない静電気の話になると3番の電荷から電束が湧いたり吸われたりすることがイメージ出来れば断片化しがちな諸公式がつながってくるわけです。
電験3種ですとベクトル解析どころか微積分の知識も問わないことになってますけど、この基本原理のイメージが出来るだけで静電気に関する問題で困ることもなくなってくることでしょう。
考えてもみてください。電験って3種も2・1種のマークシートも第1科目第1問にまず静電気を持ってくるわけです。電験を受けに行くときは3種だって京都府北部に住んでると洛中に出るために早起きを余儀なくされます。ましてや2種の時は大阪の岸和田近くまで行かなきゃならないからまだ9月初頭だってのに暗い内から電車に乗らなきゃならない。そんな寝ぼけ眼の第1限目の第1問を容易に解けるかは夕刻まで続く試験のメンタル上で重要な位置づけになってきます。
夕刻には出題者を呪ってやりたくなるのは皆さん同じと思いますが、朝一に「電験の電磁気恐れるに足らず」と思えるか「明日は電気コードをもって出題者の首でも〆に行ってやるぅ!w」と思うかでは全然違うってことは容易に想像できます。寝ぼけ眼の1限目第1問で動揺すると1限目の他の問題も冷静に解けなくなるし、気持ちを切り替えることが出来ないと夕刻4限目法規まで延々と引きずることになるわけです。
ある領域から出てくる電束のトータルは領域内の電荷のトータルに等しく、ある面を貫く電束の合計を面積で割れば電束密度になるわけです。電束密度を誘電率で割れば電界の強さです。電圧を距離で割れば平均の電界強度になる。
たったこんだけのことが分かってれば電験2・3種の静電気の問題が何とかなるんです。嘘だと思ったら過去問を見渡してください。今さっきの事を意識して問題文の電束がどんなふうに出てるか頭に描けたら問題文が求める物理量をどんな風に計算すればいいか思い描けるようになるわけです。一様ならば単純に割り算や掛け算をするんですが、そうでないときは割り算が微分に、掛け算が積分になるわけです。
ちょうど今の季節は新しく電験3種を志す方が勉強を始められる頃合い。電磁気学は単純に完成形が与えられてるってことを意識する勉強法ってのも試されてもいいんじゃないかと思います。