方丈記の世界ではない。科学の話だ。走った曲がったと、目に見える世界に興味をひかれても、原理原則にはむとんちゃくな人が多い。世の中が見えた通りなら学校は要らない。見えない法則が、実はわれらの目に見える世界を支配している。
コップの水に赤インクを数滴落とすと、インクはやがて水と混ざり赤い色はほとんど見えなくなる。ここから、最初の水とインクが分離した状態に戻そうとするのは、不可能だ。
地球上にある金の量は学校のプール2杯分だ。だがすでに人類は半分の一杯ぶんは使ってしまった。どうせ使った分も地球にあるからといって、使ってしまった金をかき集めることはできない。
インクにしろ金にしろ、赤い色素が偏在をしているとか、熱水鉱床に金が集まっているということ自体が、「騒がしい」状態であり「静けさ」を求めてモノは動こうとしていた。そして静かなほうに動いた。
色が水に溶けたインク。地球上に散らばってしまった金。均等で変化のない世界。行きつくところまでいった世界。これをエントロピー(おしまい)という。
水が高いところから低いところに流れ続けるのも太陽エネルギーがあるからであり、太陽が冷えれば海からの水分の蒸発はなくなり川は枯れる。水は静かな海から動かない。
すべて化学反応はこのようにエントロピーに向かった一方通行な反応である。
反論があるだろう。O2+2H2→2H2Oは右辺にも左辺にも反応は行ったり来たりする。たしかに。だが右辺を左辺に持っていくエネルギーは無限かな。左辺が右辺に移行したとき放出されるエネルギーを全部回収することはできない。
それはちょうどクルマのガソリンの燃焼エネルギーは、すべては運動エネルギーにならないのと同様だ。
先日エロDVDショップに入ったらちょうど停電になった。雷がひどく対雷回路が働いたようだ。真っ暗になったので出ようと思ったが、定置網にかかった魚のように出口が分からなくなった。
店員に来てもらってレジまで手を引いてもらったが、あわててお気に入りのDVDを握りしめていた。借りた。レジには乾電池が置いてあった。身障者の自立のための作業所で、バカチョンカメラをばらし乾電池を取り出しているという。販売している。
それだけならまあいいなと思った。バカチョンで使う電力はわずかなので再使用はいいことだ。
ところが電圧の下がった乾電池は再充電をしてるという。パルスで入れてるのかと聞くとそうでもなさそうだ。これこそ不可逆反応だ。危ない。
よく考えてからやらないと、ひいきの引き倒しになる。販売していた。
しかし僕は考えた。ここで電池を買えば、あたかも電池を買いに行ったような顔をして店を出ることができるな、と。でも手にはDVDが。道の向こう側には学校の女子がいた。覆水盆に返らず。不可逆反応だ。