世界遺産・法隆寺の西南に、車で行けば5~6分というところに、
吉田寺(きちでんじ)というお寺があります。
このお寺は別名「ぽっくり寺」といいます。
「ぽっくり寺」と呼ばれるようになた理由が当寺院前の大きな立て看板に書かれていました。
『本尊の阿弥陀如来座像の前で、念仏を唱えながら祈祷を受けると長く病み患うことなく、
腰・シモ・スソの世話になることなく、延命長寿を保ち最終臨終の時にも、
痛み苦しみなく安らかに阿弥陀如来のお迎えを得られ、極楽往生できるという信仰が』あり、
この信仰から「ぽっくり寺」と呼ばれるようになったそうです。
この寺院の歴史は古く、寺伝では天智天皇が勅願で建立とし、
平安時代後期の987年に僧・源信が開基したとされています。
天智天皇の勅願された寺院と僧・源信が開いた寺院がどのように結びつくのかよく解りませんが、
いずれにしても奈良時代以前からこの地にあった寺院が営々と受け継がれて今に至っているようです。
門を潜ると左手に古くて味わいのある築地塀、右手には竹林、木漏れ日が石畳に映える。
静かで、落ち着きのあるお寺、そんな予感を感じさせてくれる、境内へと導く小道です。
本堂では、毎月10日に行われる「恵心僧都の御命日法要」の真っ最中で、
読経と木魚が心地よくハーモニーし、境内に響いていました。
境内はさほど広くありません。
しかし、民間信仰を色濃く反映したお寺にありがちな賑やかな飾り付けや所狭しと立ち並ぶ堂舎といったものは一切なく、
境内は、隅々まで掃き清められ、木々が良く手入れされていました。
古代日本の1ページを飾った斑鳩の地にある古刹として、凛とした品の良さを守っておられる、と感じました。
室町時代に建てられたという多宝塔です。多宝塔によくみられるどうだと言わんばかりの出過ぎた存在感がなく、
境内に良く溶け込んでいます。
境内の中心から少し離れたところにぽつんと小さな祠がありました。
その後方には水田が広がっています。どこか懐かしい風景でした。
END