092:念（梅田啓子）

ルサンチマン委ねられたる念の文字　疑念・怨念・執念・無念

091:債（梅田啓子）

「人生の三大不良債権」を唱えし人の家庭を視たし

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊視＝み

※専業主婦を不良債権の一つと名指しした人、お忘れじゃないですよね。

090:そもそも（梅田啓子）

何故ここにそもそもわれは何ものぞ　真夜めざむれば蟻が一匹

089:成（梅田啓子）

わが腕を吸いしばかりに成仏する蚊の晩年は二十秒ほど

088:湧（梅田啓子）

わが町のはけより出づる湧水を飲みておりけむ志賀直哉氏は

087:閉（梅田啓子）

目を耳を口を閉ざして生きてきぬ未必の故意の原発の事故

086:貴（梅田啓子）

御社とか貴社とか患者様だとか奥様、お子様、お犬様はや

085:フルーツ（梅田啓子）

フルーツトマト野菜の棚に置かれいる　クリーンなエネ　クリーンなエネル

野菜の棚にフルーツトマト置かれおり　クリーンなエネルギーと呼ばれて　（推敲）

084:総（梅田啓子）

総国ちちふさ垂るる母の国ことしも枇杷がゆたかに生れり

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊総国＝ふさのくに

総国ちちふさ垂るる母の国ことしも枇杷がゆたかに実る　（推敲）

083:溝（梅田啓子）

荒梅雨に少年ひとり攫いしはこのＵ字溝　二十年経る

　　　　　　　　　　　※荒梅雨＝あらつゆ、　攫＝さら、　経＝ふ

082:万（梅田啓子）

万歳を唱え見送るその中にホームの隅に泣く女あり

081:配（梅田啓子）

いつまでも眠りのツボが捉めないバイクの気配に寝返りをうつ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊捉＝つか

080:結婚（梅田啓子）

三度目の結婚月を迎えたる娘におくる取れたてジャガ芋

079:雑（梅田啓子）

ひさびさの怒りはパワーに変わりゆくダンプに雑じりてスピード上げる
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊雑＝ま

ひさびさの怒りはパワーに変わりゆくダンプに雑じりスピード上げる（推敲）

078:卵（梅田啓子）

あやめたきほどの愛憎しらぬ手にうすかわ破り卵を割れり

あやめたきほどの愛憎しらぬ手にうすかわ破り卵を割りぬ　（推敲）