コロナ禍で様々な小説や音楽、ドラマやエッセイが生まれている。
「緊急事態下の物語」には、金原ひとみ、真藤順丈、東山彰良、
尾崎世界観、瀬戸夏子の作品が入っている。
中でも金原ひとみの『腹を空かせた勇者ども』と真藤順丈の
『オキシジェン』が面白かった。
①『腹を空かせた勇者ども』は、主人公の母親がコロナに罹ったことで
学校や家庭での人間関係があぶり出されてゆく。
ちょっとした言葉が物事の本質を突いている。たとえば
「この間担任の若槻先生に、『森山さんはあれとかそれとかこれとか
こうとか、こそあどが多過ぎます』と注意されたけど、これとか
あれとかこうとかそうとかそういうのが言葉にできないからこそ
こそあどを使っているのに、彼女にはその言葉にできない気持ちが
分からないんだろうか。ということの方が疑問だ。でも考えてみれば、
パパとかママも、この世に言葉にできないものなどなに一つないと
言わんばかりの我が物顔でつらつらと言葉を口にして、私の浅はかな
主張を破壊していく。大人には、表現できない気持ちなんてないん
だろうか」 (引用ここまで)
父親をコロナで亡くした友人が、人種差別まで受けていた。
そのことを知った主人公は、「どうして話してくれなかったの?」と
友人に詰め寄る。そのことに対して友人は
「私は心が泣いてても顔で笑う。そうしないと耐えられないんだよ。
それに差別されてるって、レナレナに知られたくない。それは普通のこと。
差別なんてしないレナレナに、差別の話なんてしたくない。本当は
世界中の人が差別を知るべきかもしれない。でもね、差別された人が
それを話せるようになるまでは時間がかかる」 (引用ここまで)
②『オキシジェン』は冒頭からして不穏な空気が流れている。
「さかのぼること二〇二〇年代からナショナリズムやポピュリズムを
貪欲(どんよく)に呑みこむことで支持者も議席数も増やしていた
政権与党は、歯止めのきかない人口の激減や少子高齢化、ふくれあがる
財政赤字、差別や格差構造の悪化、マスメディアの大本営発表化、と
坂道を転げ落ちるように劣化・退化・老化していくこの島国の歴史に
おいて、たてつづけに重大な局面を迎えることになった。
その一つが月禍症の感染爆発であり、そしてもうひとつが ”かならず
起こる”と予言されていた南海トラフ巨大地震だった」
高額な報酬がもらえるという甘言にのり、主人公は臨床実験に参加する
ことになる。だがそこはただ酸素が定期的に投与される治験の場と
いうより、反(アンチ)ユートピアの作品を製造し続ける
終身刑の獄(ひとや)だった。 (引用ここまで)
桐野夏生著『日没』といい、今の日本は小説家の眼にはこのように
見えるのか、と怖ろしくなった。
③岡林信康「復活の朝」
最近は朝の4時に目覚めてしまうことが多い。
4時に起き出すわけにもいかず、そんな時に「ラジオ深夜便」が有難い。
この時間帯にはインタビューがあるのだ。この日は岡林信康がゲストだった。
同じ時代を生きてきた人は、旧くからの知り合いのように懐かしい。
新型コロナで中国の工場が休みに入り、青空が戻って来たことを
報道で知った岡林は、不意に10年ぶりに歌ができたそうだ。
更に8曲が湧きあがるようにできて、1つのアルバムになったと言う。
YOUTUBEで「復活の朝」を聴いたが、穏やかで心が洗われる歌だ。
人間はほんの何十年の間に、これほどまでに地球を壊してしまったのか。
生まれ変わっても私は人間にはなりたくない。
アリがいいと思っていたが、集団行動が苦手なので蜘蛛がいい。
蜘蛛は生まれてから死ぬまで孤独だそうだ。
「緊急事態下の物語」には、金原ひとみ、真藤順丈、東山彰良、
尾崎世界観、瀬戸夏子の作品が入っている。
中でも金原ひとみの『腹を空かせた勇者ども』と真藤順丈の
『オキシジェン』が面白かった。
①『腹を空かせた勇者ども』は、主人公の母親がコロナに罹ったことで
学校や家庭での人間関係があぶり出されてゆく。
ちょっとした言葉が物事の本質を突いている。たとえば
「この間担任の若槻先生に、『森山さんはあれとかそれとかこれとか
こうとか、こそあどが多過ぎます』と注意されたけど、これとか
あれとかこうとかそうとかそういうのが言葉にできないからこそ
こそあどを使っているのに、彼女にはその言葉にできない気持ちが
分からないんだろうか。ということの方が疑問だ。でも考えてみれば、
パパとかママも、この世に言葉にできないものなどなに一つないと
言わんばかりの我が物顔でつらつらと言葉を口にして、私の浅はかな
主張を破壊していく。大人には、表現できない気持ちなんてないん
だろうか」 (引用ここまで)
父親をコロナで亡くした友人が、人種差別まで受けていた。
そのことを知った主人公は、「どうして話してくれなかったの?」と
友人に詰め寄る。そのことに対して友人は
「私は心が泣いてても顔で笑う。そうしないと耐えられないんだよ。
それに差別されてるって、レナレナに知られたくない。それは普通のこと。
差別なんてしないレナレナに、差別の話なんてしたくない。本当は
世界中の人が差別を知るべきかもしれない。でもね、差別された人が
それを話せるようになるまでは時間がかかる」 (引用ここまで)
②『オキシジェン』は冒頭からして不穏な空気が流れている。
「さかのぼること二〇二〇年代からナショナリズムやポピュリズムを
貪欲(どんよく)に呑みこむことで支持者も議席数も増やしていた
政権与党は、歯止めのきかない人口の激減や少子高齢化、ふくれあがる
財政赤字、差別や格差構造の悪化、マスメディアの大本営発表化、と
坂道を転げ落ちるように劣化・退化・老化していくこの島国の歴史に
おいて、たてつづけに重大な局面を迎えることになった。
その一つが月禍症の感染爆発であり、そしてもうひとつが ”かならず
起こる”と予言されていた南海トラフ巨大地震だった」
高額な報酬がもらえるという甘言にのり、主人公は臨床実験に参加する
ことになる。だがそこはただ酸素が定期的に投与される治験の場と
いうより、反(アンチ)ユートピアの作品を製造し続ける
終身刑の獄(ひとや)だった。 (引用ここまで)
桐野夏生著『日没』といい、今の日本は小説家の眼にはこのように
見えるのか、と怖ろしくなった。
③岡林信康「復活の朝」
最近は朝の4時に目覚めてしまうことが多い。
4時に起き出すわけにもいかず、そんな時に「ラジオ深夜便」が有難い。
この時間帯にはインタビューがあるのだ。この日は岡林信康がゲストだった。
同じ時代を生きてきた人は、旧くからの知り合いのように懐かしい。
新型コロナで中国の工場が休みに入り、青空が戻って来たことを
報道で知った岡林は、不意に10年ぶりに歌ができたそうだ。
更に8曲が湧きあがるようにできて、1つのアルバムになったと言う。
YOUTUBEで「復活の朝」を聴いたが、穏やかで心が洗われる歌だ。
人間はほんの何十年の間に、これほどまでに地球を壊してしまったのか。
生まれ変わっても私は人間にはなりたくない。
アリがいいと思っていたが、集団行動が苦手なので蜘蛛がいい。
蜘蛛は生まれてから死ぬまで孤独だそうだ。