国内外を問わず、信じがたいような稚拙な政策が連日報道されている。
あまりにもそれが酷すぎると、反論するどころか、もう何も考えたくない、
殻に閉じこもっていたくなる。
これにコロナ報道が加わって、何をしても何を観てもつまらない。
そんな中で出会ったのが、超おもしろくて癒される映画「転々」だ。
三木聡脚本・監督「転々」。登場人物は皆どこか壊れている。
大学8年のオダギリジョーは小さい頃に両親に捨てられ、
今も84万もの借金の返済に追われている。
その借金取りを演じる三浦友和は、小太りの冴えない中年で、
おまけに妻を殺して自首しようとしている。
どうせ自首するなら近くの交番ではなく、桜田門の警視庁。
その前に思い出の場所を散歩したい。
その相棒に選んだのが、オダギリジョーだ。
100万やるから俺に付き合え、と。
オダギリジョーは、どうしようもないダメ人間を演じたら、この人の
右に出る者はいないだろう。
「湯を沸かすほどの熱い愛」のダメ夫ぶりは圧巻だった。
若い頃の三浦友和を、ある人が「画用紙みたいな人」と形容していた。
清潔感はあるが、個性がないという意味か。
私は彼の演技をほとんど観たことがない。私の印象では弁護士、医師、
警察官などが似合いそうな俳優だ。
ところがこの映画ではまるで別人のように、茶目っ気たっぷりの
ダメ中年男を演じている。演じることを楽しんでいるようだ。
そしてこの二人を中心に、つかの間「にせの家族」を作る。
セリフの一つ一つに、ふるまいの一つ一つに、血が通っている。
時々挟まれるエピソードが絶妙だ。
愛卵子(オーギョーチイ)の店で、息子が老母を罵倒するシーンでは
二人の関係性の歴史が、手に取るように想像できる。
「岸部一徳に道で会うと、その日はいいことがある」、という都市伝説。
岸部一徳が登場する度に笑ってしまう。
ふせえりという役者が端役で出ると、こんなにも映画が現実味を
帯びてくるのか。
彼女は日本映画にとって、なくてはならない存在だ。
ウィキペディアによると、三木聡監督の奥さんということだ。
「東京の思い出の場所の半分は、コインパーキングになっている」とか、
「東京のOLは財布の留金を上にして持つ」とか、
「花やしき」が出てきたり、「思い出横丁」が出てきたり、
懐かしくておかしくて、哀感あふれる映画だ。
最後に次のセリフに胸がキュンとなった。
「幸せは来ていることに気づかないほど、じんわりとやってくる。
でも不幸せはとてつもなく、はっきりやってくる」
エンドロールを見て驚いた。原作が藤田宜永だった。
彼の600頁に及ぶ『愛さずにはいられない』を読んだばかりだったので、
そのギャップにくらくらした。
(画像はお借りしました)
あまりにもそれが酷すぎると、反論するどころか、もう何も考えたくない、
殻に閉じこもっていたくなる。
これにコロナ報道が加わって、何をしても何を観てもつまらない。
そんな中で出会ったのが、超おもしろくて癒される映画「転々」だ。
三木聡脚本・監督「転々」。登場人物は皆どこか壊れている。
大学8年のオダギリジョーは小さい頃に両親に捨てられ、
今も84万もの借金の返済に追われている。
その借金取りを演じる三浦友和は、小太りの冴えない中年で、
おまけに妻を殺して自首しようとしている。
どうせ自首するなら近くの交番ではなく、桜田門の警視庁。
その前に思い出の場所を散歩したい。
その相棒に選んだのが、オダギリジョーだ。
100万やるから俺に付き合え、と。
オダギリジョーは、どうしようもないダメ人間を演じたら、この人の
右に出る者はいないだろう。
「湯を沸かすほどの熱い愛」のダメ夫ぶりは圧巻だった。
若い頃の三浦友和を、ある人が「画用紙みたいな人」と形容していた。
清潔感はあるが、個性がないという意味か。
私は彼の演技をほとんど観たことがない。私の印象では弁護士、医師、
警察官などが似合いそうな俳優だ。
ところがこの映画ではまるで別人のように、茶目っ気たっぷりの
ダメ中年男を演じている。演じることを楽しんでいるようだ。
そしてこの二人を中心に、つかの間「にせの家族」を作る。
セリフの一つ一つに、ふるまいの一つ一つに、血が通っている。
時々挟まれるエピソードが絶妙だ。
愛卵子(オーギョーチイ)の店で、息子が老母を罵倒するシーンでは
二人の関係性の歴史が、手に取るように想像できる。
「岸部一徳に道で会うと、その日はいいことがある」、という都市伝説。
岸部一徳が登場する度に笑ってしまう。
ふせえりという役者が端役で出ると、こんなにも映画が現実味を
帯びてくるのか。
彼女は日本映画にとって、なくてはならない存在だ。
ウィキペディアによると、三木聡監督の奥さんということだ。
「東京の思い出の場所の半分は、コインパーキングになっている」とか、
「東京のOLは財布の留金を上にして持つ」とか、
「花やしき」が出てきたり、「思い出横丁」が出てきたり、
懐かしくておかしくて、哀感あふれる映画だ。
最後に次のセリフに胸がキュンとなった。
「幸せは来ていることに気づかないほど、じんわりとやってくる。
でも不幸せはとてつもなく、はっきりやってくる」
エンドロールを見て驚いた。原作が藤田宜永だった。
彼の600頁に及ぶ『愛さずにはいられない』を読んだばかりだったので、
そのギャップにくらくらした。
(画像はお借りしました)