新型コロナウィルスの感染拡大から1年が過ぎようとしている。
この間、レストランや映画館、美術館、デパートに行くこともなく、
友だちや孫に会うこともなく、ワンマイル圏内でひっそり生きている。
知らず知らずに疲れが澱のように溜まり、心が委縮していくのが分かる。
やたらとイライラすることがある。
些細なことが気になるのだ。
たとえば、2000年に出版されたT氏のエッセイの中で、
彼女は38歳の時に出産したとある。
だが最近の生協の小冊子、「生活と自治」に連載している
彼女のエッセイでは、37歳になっている。
子どもが大勢いるならまだしも彼女は1人だし、歳も還暦を過ぎたばかりだ。
初めて子どもを出産した記憶は生々しく、その年齢を忘れたとは思えない。
37は36、7と数えるが、38は38、9と数えることが多い。
この微妙な1歳の差を計算したのだろうか。
1歳の差などどうでもいいことだけれども、言葉を生業(なりわい)に
している彼女には、37でも38でもいいから統一して欲しかった。
こうした些細なことでも、私は彼女の言葉が信じられなくなる。
「真実は細部に宿る」、この言葉は以前に参加していた歌会で
教えてもらったものだが、私の好きな言葉だ。
前書きが長くなったが、白石一文原作、荒井晴彦監督の
「火口のふたり」を観る。(R-18指定)
何なのだ、この女優は!
しゃべるのも、ラーメンを食べるのも、
まるで私が節穴から覗いているように自然なのだ。
こんなにセリフを自然に言う役者を観たことがない。
内容は、以前恋人だった従兄が、自分の結婚式に参加するため
秋田に帰ってくる。
その彼を早朝並ばせて、テレビを安く買うのに付き合わせたり、
恋人同士だった頃のふたりのエピソードや考え方の違いを語り合ったり、
今も抱いている彼に対する感情や欲望をぶつけたりしながら、
結婚式までのふたりの5日間を濃厚に描いている。
瀧内公美と柄本佑の演技があまりにも自然でドラマには思えず、
一気に観た。
細部を丁寧に描いているからこそ、映画が真実味を帯びてくる。
瀧内公美にかかれば、富士山の噴火だって真実になる。
この映画で瀧内公美は、キネマ旬報ベスト・テンの
主演女優賞を受賞している。
ひさしぶりに胸がスカッとした映画です。
この間、レストランや映画館、美術館、デパートに行くこともなく、
友だちや孫に会うこともなく、ワンマイル圏内でひっそり生きている。
知らず知らずに疲れが澱のように溜まり、心が委縮していくのが分かる。
やたらとイライラすることがある。
些細なことが気になるのだ。
たとえば、2000年に出版されたT氏のエッセイの中で、
彼女は38歳の時に出産したとある。
だが最近の生協の小冊子、「生活と自治」に連載している
彼女のエッセイでは、37歳になっている。
子どもが大勢いるならまだしも彼女は1人だし、歳も還暦を過ぎたばかりだ。
初めて子どもを出産した記憶は生々しく、その年齢を忘れたとは思えない。
37は36、7と数えるが、38は38、9と数えることが多い。
この微妙な1歳の差を計算したのだろうか。
1歳の差などどうでもいいことだけれども、言葉を生業(なりわい)に
している彼女には、37でも38でもいいから統一して欲しかった。
こうした些細なことでも、私は彼女の言葉が信じられなくなる。
「真実は細部に宿る」、この言葉は以前に参加していた歌会で
教えてもらったものだが、私の好きな言葉だ。
前書きが長くなったが、白石一文原作、荒井晴彦監督の
「火口のふたり」を観る。(R-18指定)
何なのだ、この女優は!
しゃべるのも、ラーメンを食べるのも、
まるで私が節穴から覗いているように自然なのだ。
こんなにセリフを自然に言う役者を観たことがない。
内容は、以前恋人だった従兄が、自分の結婚式に参加するため
秋田に帰ってくる。
その彼を早朝並ばせて、テレビを安く買うのに付き合わせたり、
恋人同士だった頃のふたりのエピソードや考え方の違いを語り合ったり、
今も抱いている彼に対する感情や欲望をぶつけたりしながら、
結婚式までのふたりの5日間を濃厚に描いている。
瀧内公美と柄本佑の演技があまりにも自然でドラマには思えず、
一気に観た。
細部を丁寧に描いているからこそ、映画が真実味を帯びてくる。
瀧内公美にかかれば、富士山の噴火だって真実になる。
この映画で瀧内公美は、キネマ旬報ベスト・テンの
主演女優賞を受賞している。
ひさしぶりに胸がスカッとした映画です。