石牟礼道子さんが、歌集を出版されていることを知り、
早速、県立図書館から借りました。
1989年初版の『海と空のあいだに』という歌集です。
その中の、あらあら覚え(あとがき)に書かれている
次の言葉に心惹かれました。
その後、短歌の師となられる蒲池正紀氏から、
「南風」への入会をすすめられた時の言葉です。
「あなたの歌には、猛獣のようなものがひそんでいるから、
これをうまくとりおさえて、檻に入れるがよい」
かたはらにやはらかきやはらかきものありて視れば小さき息をつきゐる
くすり指にまみらふほどに粉々にこぼれてうすき吾子の産爪
狂ひし血を持つを嫌でも肯ふ日よ向ふから来る自動車が怖くてならぬ
円の中に引き絞られてゆく風景は落葉しきりに我を閉ざせり
噛みあぐみかりかり骨を鳴らす犬かかる夜風化というも進まむ
踏みしめてゆく雪の音の柔かし從き来るものは我を許さむ
墓碑銘のなき死つぎつぎよみがへる海へきざはしふかき月かげ
ともりゐるばかりに青きのどぼとけ舳にみあげし夜もありしよ
おとうとの轢断死体山羊肉とならびてこよなくやさし繊維質
体温にふれくるものは哀しきに裾にまつはる夜の野の雪
雪の辻ふけてぼうぼうともりくる老婆とわれといれかはるなり
手ぶくろをはめてねむれど寒の指骨さらけでてしきりにとがる
いちまいのまなこあるゆゑうつしをりひとの死にゆくまでの惨苦を
めしひたる少女がとりおとす鉄の鍋沈めば指を流るる冬の川
みえざる汚点もあをくすむ空うつくしき火刑のために曾てはありき
とても新鮮な歌が多く、好きな歌がたくさんあります。
ただ図書館ではほとんど読まれていなかったようで、
栞がきれいに折りたたまれていました。
早速、県立図書館から借りました。
1989年初版の『海と空のあいだに』という歌集です。
その中の、あらあら覚え(あとがき)に書かれている
次の言葉に心惹かれました。
その後、短歌の師となられる蒲池正紀氏から、
「南風」への入会をすすめられた時の言葉です。
「あなたの歌には、猛獣のようなものがひそんでいるから、
これをうまくとりおさえて、檻に入れるがよい」
かたはらにやはらかきやはらかきものありて視れば小さき息をつきゐる
くすり指にまみらふほどに粉々にこぼれてうすき吾子の産爪
狂ひし血を持つを嫌でも肯ふ日よ向ふから来る自動車が怖くてならぬ
円の中に引き絞られてゆく風景は落葉しきりに我を閉ざせり
噛みあぐみかりかり骨を鳴らす犬かかる夜風化というも進まむ
踏みしめてゆく雪の音の柔かし從き来るものは我を許さむ
墓碑銘のなき死つぎつぎよみがへる海へきざはしふかき月かげ
ともりゐるばかりに青きのどぼとけ舳にみあげし夜もありしよ
おとうとの轢断死体山羊肉とならびてこよなくやさし繊維質
体温にふれくるものは哀しきに裾にまつはる夜の野の雪
雪の辻ふけてぼうぼうともりくる老婆とわれといれかはるなり
手ぶくろをはめてねむれど寒の指骨さらけでてしきりにとがる
いちまいのまなこあるゆゑうつしをりひとの死にゆくまでの惨苦を
めしひたる少女がとりおとす鉄の鍋沈めば指を流るる冬の川
みえざる汚点もあをくすむ空うつくしき火刑のために曾てはありき
とても新鮮な歌が多く、好きな歌がたくさんあります。
ただ図書館ではほとんど読まれていなかったようで、
栞がきれいに折りたたまれていました。