ジョルジュの窓

乳がんのこと、食べること、生きること、死ぬこと、
大切なこと、くだらないこと、
いろんなことについて、考えたい。

鰹節(3)

2009-01-20 | 発酵
『にぎやかな天地』の中で 聖司たちは
鰹節については、鹿児島県枕崎市の「丸久鰹節店」というところに
取材に行っている。

カメラマンは 無駄のない作業を邪魔しないように写真を撮るのに
苦心している。

「日本の優れた発酵食品を、
 もうこれ以上のものはないというくらい丁寧に取材して
 後世に残すための書物」(下巻 p14)
を作る取材のためだ。







びっくりするほど濃密な芳しい香りを放つ水仙。






恐ろしいほどに すさまじく良く切れる刃物で 
熟練の技によって 瞬く間に切り分けられる鰹。

「この一連の作業は ほとんど誰もひとことも発しないまま
 延々とつづけられていった。

 無駄口を叩いたら、その瞬間に指を切り落としてしまいかねない・・・・・。

 そんな緊張感が、彼らを一様に寡黙にさせている・・・・・・。」(下巻p47)



その切り身(?)を茹でるのだが、その温度が難しい。

茹でたら、それを棚に載せて燻す(いぶす)。

樫の木の薪で 燻し続けること、15日間。

今日 燻した身は、明日は一段上にのぼり、
一番下の段には 新しい身を載せて 燻す。

それを繰り返して 鰹の身は 一日に一段ずつ のぼっていく。

15日目に最上段に達して、取り出される。

燻されて3、4日目には 美味しい生節ができるそうだ。






さて、15日間 樫の木の薪で燻し続けた鰹の身に
カビ菌(コウジカビ)をふりかける。 

これが、一番カビ。

カビは 水分のない所では 生息できない。

だから彼らは 鰹に残っている水分を吸収していく。

しかし このカビには寿命があって、15~20日で死滅するらしい。

このカビを払って、天日に干して、同じように、2番カビへ。

2番カビも懸命に水分を吸収する。

寿命は、20日くらい。

2番カビを払って、天日に干して、また3番カビへ。



こうして鰹節は出来上がるのだが、
この鰹節店では 更に4番カビをつける。

カビをつけづに 何日かの天日干しだけで出荷するのが、「花かつお」。

「花かつお」と「鰹節」は、まったくの別物だった!



このようにして、作るのに 約6ヶ月。

さらに卸業者のところで6ヶ月寝かせるのだそうだ。

これを昔は キカイの力を借りずにやっていたはず。

ため息が出そうだ。






カビは 自分たちが生きるために 必死で水分を吸収し、
同時にすごいことをしている。

酵素を作り出すのだ。

その酵素を 鰹節の中に送り込むのだ。

その酵素は、鰹の切り身の中のたんぱく質から
アミノ酸やイノシン酸などの「旨味」を生成する。

そうして、最後の最後まで 水分を吸収しつくして、
同時に、油脂成分を完全に分解してしまうのだという。

カビが 鰹の脂を 完璧に分解してしまう。

だから、鰹節からとった出汁に脂は浮かない。

限りなくヘルシー!

これは 鶏がらや 仔牛の骨でとったスープとは
まったく違う点だろう。








近くのスーパーや生協の店で購入した商品。

上の写真の中の、「かつおパック」とある商品には、
「四番かび付け鹿児島県枕崎産かつお節使用」
とある。

おお!

頼もしいではないか!!!



しかし、たいていの袋には「出汁のとりかた」が書かれているものだが、
このかつおパックの袋には

「お好み焼き、焼きそば、たこ焼き、湯豆腐、冷奴にふわりかけて。

 ほうれん草などのおひたしや オニオンスライスにふりかけて。
 
 醤油をからめておむすびの具や、おたたかいご飯にのせて、
 お召し上がりくださいませ。」

としか書いてない。

これで出汁をとってはいけないのか?

小さなパックに小分けしてあるから、無理なのか?

大きな方の袋のものは 2番カビ付けまでと書いてある。

そして 大袋は 今ではもう 棚に置かれていない。


                      もう少しだけ、つづく



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