馬鹿も一心!

表題を変えました。
人生要領良く生きられず、騙されても騙されも
懸命に働いています。

飛びたてない渡り鳥?

2012-10-02 00:08:44 | 日記

9月29日(土)午前中 診療所で血液検査、検便、心電図、レントゲンを受ける。

老先生より健康、異常無しのお言葉を戴いた。

 

15時半、遊歩道を早足でマリンスタジアム方向へ向かう。

スタジアム手前の川沿いの草地を通って幕張海岸に出た。

東京湾最奥の海に夕陽が光の波となって向かってくる。

茜色になりかけた雲間の下に

ディズニーランドのお城、スカイツリーは蜃気楼のごとく

ねずみ色の海原の先に浮かぶ。

 

波打ち際まで出た。

銀白色に胡麻を振りかけたような波消しブロックを選びながら

誰もいない海辺を歩いた。

寄せる波と引く波のゆったりした海の単調なリズムは

人間の安らかな鼓動に似ている。

少し先の波消しブロックに剥製と見間違う

鳥が動かずに片目は海、もう一つの目は陸地を見ていた。

静かにゆっくり近づく、動かない、更に近づくが動かない。

手で羽を触れるまで近づいた。

羽が動いた。飛び立つのだと上を見たが

飛び立たない。

片側肩翼が羽ばたかない。

故障と言うべきか何らかの怪我なのか飛び立てないのだ。

姿見からすればウミネコだと推測したが、野鳥観察の知識はない。

私はじっと見続けた。

鳥は私の見詰めるのを避けて海に首を向けた。

 

空を飛べない鳥は既に鳥ではない。

海に漂い魚を獲る、空中の虫を獲る。

飛んで危険から逃げる。

全て失われてしまった。

テトラポットを根城とする野良猫集団の獲物になるか

海面に漂いながらも飛び立てないまま果てるしかない。

野生は過酷な生き方だ。

巣立ちすれば孤独に生きて 親兄弟の助けはない。

15年以上前、護岸の下に葦の群生した砂地があった。

近寄ることはなかったが犬の悲しげな泣き声が葦の群生から聞こえた。

犬が苦手な私は無視して通り過ぎた。

帰りに群生の近くを通ると又悲しい泣き声がする。

気が重いが護岸に行き、下の葦の群生地を見下ろした。

舌を出し、目が充血した茶色の中型犬がこちらを見詰めた。

首に工事現場で使う虎紐が巻かれ、束ねた葦の根元にきつく

縛りつけてあった。

私の犬嫌いは尋常ではなく人に言えないほどなのだ。

子犬が道端にいるだけでもその道路を通れないのだ。

心無い愚か人間がこのような残酷な仕打ちをしたのだろう。

どの位の時間だろうか、私と犬は上と下でじっと見詰め合った。

私は1メートル程の護岸を下りた。

葦に巻きつけた虎紐は犬が必死に噛んだ跡があった。

犬に噛みつかれるとの恐怖を感じながら解いた。

犬はじっとしていた。

葦から虎紐は外れたと同時に護岸に飛び上がろうとした。

飛び越すことは出来ないので私が護岸に上がり

虎紐を引っ張りあげた、犬の首より上が護岸の上まで上がったが

紐が切れて犬は上がれなかった。

又私と犬は上と下で見続けた。

本当は抱き上げて護岸の上に置いてあげればよいのだが。

私は声を出して犬に語りかけた。

「後は自分で何とかしな」

犬は葦の群生地の奥深くに入って消えた。

護岸を越えなければ生きていけないことを犬は知らない。

 

それから数日後、陽射し傾く冬、幕張海岸に注ぐ川を渡った。

橋の下から猫の泣声がする。

又悲しげだ。

橋から流れを見た。護岸は菱形ブロックが垂直に貼り付けられている。

前夜の大雨で水かさ多く、流れは急で海に注いでいた。

流れの水面ギリギリに黒の子猫がブロックの溝に前足をかけて上を見て泣いている。

誰も歩いていない遊歩道は太陽が沈みかけていた。

垂直の護岸は水面まで3メートルはあった。

子猫は滑り落ちたか、いたずらか分からない。

懸命に這い上がろうとするが水に落ちて前足を溝にかける。

私を呼んでいるのが分かる。

周囲を見渡すが梯子もロープも板も無かった。

茜浜と呼ばれる地名場所に太陽が沈み、川面に刺すような冷風の通りになった。

私は足早にその場を去った。

黒い子猫は闇の急流で泣声だけが微かに聞こえた。

まもなく聞こえないところまで来た。

 

9月30日(日)夜半暴風雨になった。

寝床で、飛べなくなったウミネコを思った。

都心近くで生きてゆく、はぐれ生き物は過酷な運命があるのだ。

人間もしかり、思わぬアクシデントが数秒後には起きる。