6月19日(金)午前9時 漁港の水門を抜け、京葉道路高架下にきた。

あの漁師が自転車で通りかかった。
私のこと「あんた太ってるな」と初対面でいきなり言われた
元漁師の爺さんだ。
http://blog.goo.ne.jp/kikuchimasaji/e/bf7bc96200382b4a43245418dc44456e
http://blog.goo.ne.jp/kikuchimasaji/e/2c2bcf1fa1769904cc099d57debd3d44
一瞬、私の顔を思い出せずに目を細めた。
お!と言って自転車を止めた。

「物と金はどんどん使わなくてはだめだぞ」
「俺は81歳、本当は死んでなければならない」
元漁師は一方的にしゃべりだす。
前に会った時は82歳と言っていたが?
ふと、歯抜け爺さん私のジャケットのバッジを見る。
「おお!新撰組の旗じゃねーか」
「カッコイイ、バッジだ」

私は答える。「よく知ってるな」
「そうだろう、あんたが言う前に俺っちが言ったろう」
得意そうに「こういうバッジを男は着けなければだめだ」
私は「あんたにあげたいが、これは俺の商売で作って売っているんだ」
「他のボールペンのサンプルだったらあげれるのだが」
爺さんずっと見続ける。
私は提案した。
「そうだ!あんたは元漁師だ、魚一匹と交換しよう」
小さい声で「俺のとこ、もう魚は入らんのだよ」
元気なかった。
突然 「あんたは50歳にしか見えねー、てぃしたもんだ」
だめだよ、おせいじ言っても売り物を、ただにするわけにはいかねー」
今日も高架下で話し相手もなく日向ぼっこするのだそうだ。
歩きながら、ふと思った。
爺さん「物と金はどんどん使わなければだめだぞ」言ったが
物は使いたいが、金は使いたくないのだ。
その執念こそ長生きできるのだ。
先週の土曜日 漁港近くの家で通夜の提灯が灯った。

名前をみると知っていた。
15年以上前 漁港近くでスナックを経営していたマスターだ・
紹介されて何度か飲んだことがある。
太っていて温厚で歌が上手で料理も旨かった。
その後、スナックを閉じて、元々網元であった自宅で
予約を一件だけ受ける料亭のような店を始めた。
地元で獲れた新鮮魚介類の会席料理で隠れた人気があったらしい。
私よりずっと若かったはずだ。
この葬儀が営まれる漁港の対面のマンションに2010年6月25日に
食道癌で亡くなった友人が住んでいた。

およそこの世のもので、いつまでも破れず、変わらずにいるものは何もない。
