11月9日(金)
18時 義仲に入る。
カウンター隅に腰掛け、神鷹、鳥刺し、つくねを頼む。
気持ちが揺さぶられていたので、静かに冷酒を飲んで
落ち着かせ、嫌なこと振り切る。
19時店を出る。
夕闇に吹く風は秋。
路地をヨタヨタ歩き駅に向かう、京王線の開かずの踏切が
タイミングよく開いた。
改札に向かわず、又横道に入った。
気になっていた、担々麵の店がある。
4人程が腰掛けられるカウンター。
客はいない。
ヤンキー風の若者が黄色の鉢巻きをして
厨房に立っている。
担々麵と生ビールをお願いする。
中グラスに注がれた生は美味しい。
担々麵は、台北裏通りの屋台の香りがする。
疲れなのか、ビールが喉を通らない。
麺は食べきったが、飲めない。
若者に、「御免、飲み切れないので残します」
「体調が悪い」
「風邪ですか」
「いや 違う」
「前立腺癌治療で放射線治療した」
「その副作用で排尿をコントロールできない」
若者が言った。
「お幾つになりますか」
「71歳」
戸惑いの表情で
「若々しい」
「俺の親父は、前立腺癌で61歳の時死んだ」
返す言葉を飲み込んだ。
どのような状況下で亡くなったか
訊ねずに店を出た。
駅構内の多機能トイレで排尿した。
酒は愁いの腸に入り
相思雨となる。