5,800円 朝食付(呪)
どうでもいいが、「からすまおいけ」はアラクノ-フォビア(クモ恐怖症)と同じイントネーションではないのかな。実際には「あなたのおうち」のような抑揚だ。その日は授業が1時から始まるというので1時前に家を出て、チェックインまで時間があるのでどこか建物の中に入ろう。暑い中うろついていると干からびる。
四条の端に、BALといういかにも「勝者」といった風格のパルテノン神殿みたいなモールがあるので見てみたかったが、ヴィア・インに泊った夜にはるばる歩いて来たら8時で閉まっていた。今日こそは。入り口に勝手に測れとばかりにピストル型の体温計が置いてある。試しに手首で測ってみたが(液晶)「Lo」と出るばかりで全然測れない。壊れてるんじゃないのか。試しに頭に当て南無三っとばかりに撃ってみたが、エラーしか出ないのでやめた。
このモールもお高くとまっているが、まだ新風館に比べたら正気を保っているように思う。そろそろ水分補給をした方がいいのではないか。無印良品がやっているカフェがあった。食べ物はあの店で売ってるレトルトを開けて出してくれるのだろうか。と思いきや、普通に体に良さそうな惣菜などをケースの向こうからよそって出してくれる。看板の涼しげな薄いエメラルドグリーンの飲み物は何だろう。近寄って行ってみると天然色素で色をつけたメロンソーダということがわかった。アイスも乗っている。よし、これだ。これにしよう。注文しテーブルに座って、さぁ飲もうとすると実家の家屋保険から電話。
(保険)「大雨で瓦が落ちたという場所がわからない」(きの)「先日FAX送っただろう」(保険)「写真の画質悪くて見えないし」ぶつぶつ言っている。今どきFAXしかないって言ったのはそっちだろう。だからわざわざデータ送ってコンビニの機械からFAXしたんだぞ。(きの)「蔵の前にハシゴがあるから登れ」その返事がこともあろうに(保険)「僕危ないことはしちゃいけないって言われてるんですゥ~♪」(きの)「ははは」誰にだ。ママにか!!
電話を切り、見ると淡いメロンソーダはすっかり溶けていた。カーッ。北斗神拳のような突きで管理会社にメール(きの)「くそくらえ!案内頼みます(人)」(管)「了解(笑)」何だあの軟弱野郎。幼稚園児か。ハシゴぐらい登れよ。ゆとり世代め。前の担当の宇多田さんならあんなことにはならなかった。帰ってこい、宇多田さん。店を出て怒りにまかせてガツガツ歩いていて、気が付いたら烏丸通りは晴れだった。
梅雨が明けた。
ホテルに着いてチェックイン。ここもおだやかに手首で測る。(フロント)「はい大丈夫です。(器具)サッ」何度でしたか??Loではないですか?ハートンは微妙に古く、大人数の団体客などを大量に泊めてたんだろうなぁという造り。フロントで歯ブラシだけをもらい、部屋の持ち帰りスリッパをもらった。
廊下に、小さい頃行った白浜の古いリゾートマンションと同じ匂いがした。消毒薬なのかとにかく団体が泊る施設という感じだ。どうもロビーの噴水から階段のところに見覚えがある気がするのだが、京都には中学の修学旅行の時しか泊まってない。しかもそれは1ブロック離れたこれから見に行くホテル杉長だ。実家の近くの観光地のホテルの記憶かな。
(フロント)「朝食は1階の洋食レストランで取っていただきます。昼は1階と2階の和食レストランが開いています。そして今度は夜になると1階のレストランが閉まり2階の和食が開くんです」 ??何だこの青上げないで白下げないみたいな説明は。(きの)「あの、朝食を食べたいだけなんです」(フロント)「じゃあそこ。」見ると衝立で仕切った赤のチェックのテーブルクロスのかかった食堂みたいなスペースがあった。ここが洋食レストランなんだな。要するに洋と和が、朝と夜で交互に開けてると。
部屋に入り窓をうっすら開けたら向かいの部屋が正面にあって、アーバンホテルと同じぐらい面白くない眺望だった。本棚のような作りではないが、こんなに広い敷地なのに建物をH型に作って向かい合わせにするからこんなことになるんだ。大勢を泊めるには仕方がないのかもしれないが、自分で自分の視界をふさぐこの造りは上手くない。
デスクの上に「ハートン通」という社員手書きの京都案内の冊子が置いてあり、表紙に総支配人が不敵な笑みでピースをしている。(きの)「ほう。パラリ」全部読んで鍾馗(しょうき)さんという人の来歴について詳しくなった。昔の中国で一番に試験に受かったのに、顔が恐いという理由で皇帝から資格を剥奪されショックで自害。あとで皇帝の夢に出てきて助けて神に昇格。今は日本で民家の瓦を飾るという数奇な人生だ。
電灯は窓付近の天井が淡く光る間接照明。冷蔵庫はペルチェ式だった。最近ホテル業界で流行ってるんだな。製氷室がないからアイスはしまえないが、氷は製氷機のとこから持ってくればいいもんね。エアコンは全館冷房なのかと思ったが、操作パネルが付いていて風量でなく温度を調節できるから、もしかしたら壁の中に隠れている個別のエアコンなのかもしれない。だったら、先週のモントレもそうだったのか。
最近のホテルは防犯上カードキーに部屋番号を書かないが、ここはばっちり書いてある。エレベーターも誰でも乗り放題なので入り口からフロントに入り、遠くからカードを見せて宿泊客であることをアピールして通ると、全員がお帰りなさいませと言ってくれる。そういう昔ながらのゆる~い感じがなんともいえない。できればカギも昔ながらの、アクリル棒が付いたのがいい。それをわけもなくブンブン振り回し、最上階のバーで(屋上ビアガーデンではない)さりげなくテーブルに置いて見せたりするのが80年代の流儀だ。
さて、2ブロック先にある杉長を見に行こう。なぜ20年前以上前に泊まった旅館の名前がわかるかというと、家にその時にお土産でもらった清水焼の「杉長」サイン入り箸置きがあるからだ。どれだけ物持ちがいいのか。途中の道を歩いていたら古道具屋があってのぞき込んだら、ヒマだったらしいそこのご主人に引き込まれ、立ち話をして散々杉長の話題を出してから店を出た。町内会の折にでも心配している人がいたことを伝えてくれ。
いざ、角を曲がったら隣のホテルも改装中だった。北区の寺もここぞとばかりに改修しだしたが、みなさんこの機にやるつもりなのか。京都ほど歴史が長いと、何度か困難を乗り切った経験から、またもとに戻ると冷静に判断できるほどの記憶の持ち主がうようよいるのか。それをうまく伝えることができたなら、前回の不況の時に絶望して死んでしまったという実家の近所の建設業の人も、もしかしたら死なずにすんだのかなと、ふと思った。
昨年、偶然この辺りを通って裁判の傍聴に行った時には、1本向こうの通りを通った。公立の中学校にオシャレなカフェが併設されてて、都会にもほどがあるわ!と思った。その時は杉長の場所を知らず、今回初めて来てみた時が最後になってしまった。
取り壊し中の杉長は、外壁の黄土色のレンガの一部を残して入り口の内側がぽっかり暗く開いていた。白い防護シートの裏で業者が水を撒いていて、湿った赤土のような匂いがした。こういう写真を撮っていいものか、どうも悩む。
1階の、置物がたくさん並んだ奥の茶色いソファーのある細長いロビーも覚えている。修学旅行の夜、親から頼まれたお土産の八つ橋を何箱も持って帰るのが面倒になり、一人でこっそり宅配便で自宅に送る手配をしようと宿の人と交渉していたら、先生に見つかって自分で持って帰れと止められた。なぜだ。中学生が郵送してはならないという決まりにはなってなかったぞ。だから担任に嫌われるのだ。それにしても、宿の人には時間を取らせたので、すいませんと言おうとして「これは申し訳ございませんでした」とずいぶんあらたまってしまったあたり、やはり中学生だったのかもしれない。
杉長が新しくなったからといって、自分はまた来るとは限らない。用があったのはこの古い杉長の方で、だったら今回最後に間に合って、それで良しとするべきか。思い直して写真を撮り、しばらく名残惜しく見ていたが、狭い道でどこかの社員の団体が通り、それに押されるようにして大通りへ出た。
昔から、ほの暗いレストランを探していた。雰囲気のあるほの暗いレストランだ。モントレのパブは黒すぎた。40年ほど前、新宿のおばあちゃんちの近くにレストランBooという木枠にガラスがはまったドアのほの暗い洋食の店があった。叔父や叔母たちと散歩がてら食べに行って、また行こうと思ってたら引っ越してしまい、その後長じて夢に出てくるなど、記憶の中で原風景となっている。先日法事があり調べてみたら無くなっていて、近くに焼き鳥Booという店があったが、商売替えをしたのだろうか。精進落としに焼き鳥では合わないので近くの白を基調とした眩しいイタリアンにしたが、とにかくほの暗いレストランには何か夢があるような気がして、いつかどこかにあるのではないかと探してしまう。
おそらく、楽しかった時の記憶だろう。祖母が元気で叔父夫妻にまだ子供が無く、世界が全部自分の為にあるような、そんな気がしてた頃のことをいつまでも覚えているだけだ。
今回ホテルのページを見ていて、ギンモンドのレストランが雰囲気が良かった。落ち着いた照明、異国情緒の漂う茶色の店内。どうしてかそこが気に入って、ホテルもそこに泊ろうとしたら会員にならないと予約ができないと書いてあり、横暴代理店の取次(娘)が嫌った為、代替案で通りの向かいのハートンになった。
その後、授業で半日だけデイユースの案件ができたらしく、そこのランチボックスが付いてくるといううたい文句に踊らされてホイホイと会員になり、予約して出かけて行った。ランチボックスは至上のクオリティーだったらしく、(娘)「いろんな外国野菜が1種類ずつ入ってる。味付けも複雑で、あれはおまけで付いてくるレベルではない!」と絶賛しながら帰ってきた。
だから言っただろう。ほの暗い店には夢があるんだ。くそう。行ってやる。ハートンからだってよそのレストランに入ることはできるんだ。良い仕事をした分は褒めてやらないとな。5:59 pmに木の重いドアを押し開けて最近の定番の挨拶(きの)「やってる?」(店)「今ハッピーアワーが終わりました。今からディナーの時間です」丁度良かった。
(きの)「娘がテレワークで利用して褒めていました。だから今日は本隊が来てみましたよ」。(店長)「うぅ、ありがとう。連休は混んでたけど、その後またお客さん来なくなっちゃって。この後この世はどうなるのでしょうか。」えぇ!?急にそんな深遠な議題。知らないよ。占い師じゃないんだから。
最近なぜかそういう質問を受けることが多く、日本とユダヤ人は手を洗うから大丈夫でしょうとか、人類は共存することになるなどとまことしやかに答えているが、皆に聞いてまわっているのだろうか。それとも、もうかりまっかみたいな挨拶?しかしおざなりな返答をするのも面白くないので(きの)「経済的に見て、これからどんどん客が来なくなるわけないから、これから増えていく方でしょう。だから大丈夫です」自信満々に言いきった。
お前に何がわかると言いたいが、一緒になって不安をまきちらしても良くないし、理論的に言って今からますます来なくなったら日本経済が滅びてしまう。それに、わけもない自信が結果を変えることだってある。杉長もそう言っている。
地道に良い仕事をするんだぞ。そうすれば、いつか誰かが見てくれる。うんうん。それにしてもあの保険屋はどうだ。仕事をする気はあるのか。怒ったらダメだ。怒ったら負けだ。むしゃくしゃして肉料理ばかりを頼んだら、店長が、それはあなたには多いのではないのかというようなことを丁寧な言い回しで伝えてきた。(きの)「大食いだから多分大丈夫ですよ」(店長)「失礼しました」こないだのココン・フランスといいなぜ厳しく制限する。家から通達でも来ているのか。どうせ帰ったら根菜カレーと雑穀米を食べさせられるんだ。出かけている間だけでも好きなものを出してくれ。
前菜が来た。皿の中央に縦に真っすぐ置いた長い肉と、真ん中から斜めに下がった魚とナス。(きの)「ト?」その上にイクラと何かの新芽と花が散っている。植物に造詣が深いと自負していただけに、何の新芽かわからないのがくやしい。しいて言えば、庭の草むしりをしている時によく見かける雑草?白い花が咲く。そんなもの入れるはずないから食用の何かだろう。濃いピンクの花はザクロのむくんだ花を小さくしたような。毒でない限り、花だろうと何でも食べようと思えば食べれるはずだ。
肉とどこかのカジキを炙ってナスをどうにかした何か(名前忘れた)は、おいしいがお酢の味しかしない。これに大好きなゆかりをかけたら尚いいだろう。フィンランドでも思ったが、気取っているほど薄味なのか。肉は柔らかいベーコンのような味がした。柔らかさが鮭のハラミに似ている。
そして、ついにメインのカルボナーラがやってきた。生パスタのチェーン店(ほぼセルフ)や薬膳の店の鍋料理でもない、ちゃんとした人の作ったカルボナーラを食べてみたいという希望がようやくかなえられた。先週の飲み屋で頼みたかったが、他にムール貝やらきのこグラタンやら食べたいものが多すぎて無理だった。待ちに待った黄金のツルツルのノド越し・・・。
(きの)「!!」やってきたのはスライスしたサラミ大の黒い脳みそに全面覆われたドーム状の物体だった。切片をよけてみると確かに下の方に黄色い麺があるが、もうトリュフが気になってそれしか覚えていない。へんな生のマッシュルームみたいな匂いがするし、食感も、切れ切れのボソボソのアワビの端っこ。自分はトリュフは好きではないと再確認した。
そういえば、肝心のカルボナーラはどんな味がしたのか覚えてない。またあの前菜の肉を細かくしたようなものが入っていたから、さっきのは豚肉だったのか。ではパンチェッタかグアンチャーレのどちらかだ。ステーキ状の固まりだったから何かよくわからないまま食べてしまったが、そうするとカルボナーラ2人前のベーコンか。だから多すぎると言ったんだな。なるほど。さて次は、選びに選んだレモンのソルベだ。
途中で店に入ってきた白いポロシャツのオッサンが前に座って食べ始めて(白)「うっチーズが。なかなか来るね」というようなことを言って苦しんでいた。券を見せていたようだから、ホテルから来たんだろうけど、無地の肩章付きの白いポロシャツを全部ズボンに入れるとは、何てセンスが悪いんだと思ったら、店長がよくあなた方を見かけるというようなことを言っていたから、何かの集団の制服なのだろう。舞鶴方面から来たのか。こちらのメニューを参考にしたのか急にソルベを注文し食べて(白)「う~んレモン!」とのけ反っていた。当たり前だ。レモン果汁を凍らしたものだ。さっきから原材料名を叫んでいるだけだが、ちゃんと味わっているのか。
メニューにレモン・チェッロという酒があったから、この店やるなと思ったが、酒は好きでないのでパインソーダにした。あれをアマルフィーの網棚で育てたレモンでアルコール抜きで作ってほしい。しかし、そもそもの作り方がアルコールでレモンの皮エキスを煮出すようなものだから、無理なんだろうな。レモンの薬効成分は脂溶性なのかな。マムシ酒とただのマムシ水(気持悪っ)の違いみたいなものか。はっ、まさかそれをレモネードと呼ぶのでは。真理をひとつ発見した。
ソルベの後にカシスの入ったコーヒーを飲み、結局ひとりで酒も飲まないのに5千円分も食べて激しい後悔の念を抱え横断歩道を渡る。ゼッタイ家に帰ったら怒られる。途中、若いホームレスを見かけた。たぶんクツにビニール袋を履いていたので、ラッパーとかではない。京都の街中では珍しい。なぜビジネス街の烏丸なのだろうか。半刻前の自身の暴飲暴食を思いかえしてますます嫌気がさして走って帰る。明日から良い子になる。
部屋に帰って用事をこなしTVをつけてみる。NHKでマリモの特集をやっていたので熱心に見る。NHKが持ってる超高感度カメラで何十時間も撮影した結果、じっとしていると思われていたマリモはなんと波でグルグル回転しているではないか。なるほど、あれで短い毛並みを維持しているのだな。うちのは不摂生でスーモのようになってしまった。動いたら毛が抜けてそのうちなくなってしまうのかと思っていたが、どうにかして回転させないと。
しかも、ちぎれてもマリモ、1本でもマリモ、いびつなマリモ、岩に着いたマリモ!ってもうそれコケじゃないのか?本当の目的はバラバラになって増えたり集団で場所を占めて湖の底を統べることらしい。結果的に丸くなったけど、別にかわいくなりたかったわけではないという世知辛い本音を知った。
朝起きて、さっそくあの食堂に行ってみる。そういえば確認メールでチェックインの時点で洋か和か選べと言われていたが、渡された券には洋食セットと書いてあったから、そうか洋食なのだなと思っていると入り口で(係)「ご飯かパンか選べ」写真にはあまり好きでないバターロールが2個も3個もあったので朝からぱさぱさしたものが食べたくなかったからご飯を選択。通常はバイキングだが、今は個別に1人分ずつ出すそうだ。
席に着いて外の植え込みの景色を見ながら食べ始めた。朝日が差してきて向かいのテーブルの禿頭のおじさん(おそらく僧侶)の頭に当たって光っている。それを眩しく見ながら食べていたが、そんなに好き嫌いがあるわけでもないのに、なぜか全然食べ終わらない。丼1杯の山盛り千切りサラダ、水菜や大根などの細い具が沢山入った味噌汁(白みそ薄味)、コロッケ大のハッシュポテト(無味)、海苔の袋(これはそのまま食べるのか?)、半生イギリス風卵など、微妙に苦手な要素が組み合わさり、もたつく。昨日の食欲はどうした。食べ過ぎて胃もたれ?
朝食券は1,200円の昼飯としても使えるとか言ってたから、1,200円分の朝ごはんなのだろう。量が多いのかな。ソーセージやフルーツなど特に高そうにも思えない献立だが。全てが薄味で、味のなさが小さい頃肺炎で入院していた時の病院のごはんに似ている。食堂に下りてきた時にぽつぽつ居た他の客も、一人また一人と食べ終えて旅立っていく中(きの)「ポツン。」7:30すぎから食べ始めて気が付くと9時前になっていた。
これはいけない。無味のハッシュポテトめ。もさもさとしてお前も気取っているのか。そうだ、塩をかけよう。塩がこの問題を解決してくれるような気がして探して持ってきたが、出ない。すべてがこの梅雨の忌まわしき湿気で固まり、3つある瓶をそれぞれ渾身の力で振り回してみたが出ない。
しょうがないのでキッコーマンの卓上醤油を(瓶)「ドボッ」なんでこんなに出るんだ。卵かけごはんの原材料のようになってしまったスクランブルエッグをすする。何か飲み物を。そうださっきオレンジジュースの横に置いてあったドイツの健康飲料。急いで取ってきて飲んだら(きの)「ギュワーッ(顔のゆがむ音)」酸っぱい。体にいいのかもしれないが笑顔で飲めない飲料はいただけない。
コーンフレークを食べて気を取り直そう。(ハンドル)「ばきゃっ。ゾロゾロ」いっぱい出た上に牛乳を入れて苦労して遠くのテーブルまで運んだらプレーン味だった(泣)もう砂糖を取りに行く気力もなくふやけた煎餅を機械的に口に詰め込んで去り際に係の姉ちゃんに(きの)「そこの塩出ませんよ!」捨て台詞を吐いて出て行く。
コメダでもそうだった。待ち合わせでここで待っているようにと言われ、そこにはコメダ一軒しかなく、前に家の近所の店が開店した時に入って食べたいと思うものが一つもなく以来避けてきたが、有無を言わさず連れてこられた。夜のどのメニューにも山盛りの千切りサラダが付いてきて、食べても食べても減らない。噛んでいるうちにアゴも痛くなり、奥歯が歯ぐきから浮いてくるような歯科治療的な気持ち悪さがあった。後から来た隣の席の親子連れが余裕で食べ終わってもまだシャクシャクやっている。おかしい、さっきと同じ量がある。むしろ増えてないか?なんでみんなこんなもしゃもしゃしたものを上手に食べれるんだ。草をはむ馬のような気分がしてきて泣きそうになりながら食べたあの記憶がよみがえる。
嗚呼!ハッシュブラウン。サンフランシスコでもそうだった。いつも料理の付け合わせのハッシュブラウン(焦げたジャガイモの千切り)がぱさぱさで食べれないから、ベイクド・ポテトや煮た野菜、ワイルドライスなどを選んでいた。サンフランシスコのフィッシャーマンズ・ワーフという最高にオシャレな湾で朝食を、となった時にメニューには山盛りのハッシュブラウンが絶対付いてくると書いてあった。他のと替えてくれと粘ったがいじわるな店員にダメ~~と言われ、外のテーブルの横を飛んでた巨大なカモメの群れにあげてしまった。油とイモだから体に悪いことはないだろうが、あれで味を占めたら困る。
千切りのものが苦手なのかもしれない。律儀に全部を噛もうとするからいつまで経っても食べ終わらない。だからバイキングでは自分の食べれるものしかよそわないし、店でも食べれるものしか注文しない。しかし意図していないものがこんなに食べれないとは。というか、なんで苦手な食感の物が大集合したのだろう。
チェックアウトが12時だというので、散歩に出た。セミの声がうるさい。街路樹に止まって盛んに鳴いている。昨日は居なかった。どうして梅雨が明けたとわかるのか。在原業平の邸宅跡を訪ねる。写真ではジムの看板の後ろだったから、隣のビルにあるジムのことかと思いその辺りを探し回る。休日の銀行の正面の石段にクツを脱いで座り本を読む初老の男性。彼もホームレスだろうか。気になる。
知り合いの住職に教えてもらったパン屋に買いに行くが、肝心の西京味噌を練り込んだパンは今の時期は作ってないとのこと。そのまま歩いていたら前に泊ったガーデンホテルの前に出た。そもそもあれが京都に来て最初の外国人扱いされた場所だ。個人経営の植物だらけの個性的なホテルだった。フロントのおじさんがのん気に植物に水をやっていた。営業再開したのか。
途中でリクシルのショールームがあったので、洗面所の排水口にはめるあのオシャレなステンレス板について聞いてみたかったが、入り口に(貼り紙)「昨今の情勢により予約をした人以外見せない」という主旨のことが書いてあったのでやめる。この通りはショールームが多いのか、昨日も歩いていたらイスがいっぱい並んだイスだけの広いショールームがあって、入ってみたが店員が誰もいなかった。プラスチックでできたイスが2万も3万もして、意外に高いんだなと思いながら見ていたら、しばらくして奥から2、3人出てきてこわごわ対応してくれた。ホテル程人に慣れてないらしい。
汗をかいたのでハートンの部屋に帰って風呂に入る。このお風呂は左側の蛇口をひねると熱湯が出て右の水と温度調節をしなければならない。どうもこの調節が下手で、いつまで経っても熱湯か水のどちらかにしかならない。洗面所で顔を洗って手近なタオルを手繰り寄せ、ゴシゴシ拭いて後でよく見たら、それだけ緑のラインが入ってる。台拭き?大きさ的にハンドタオルだと思っていたが、どうも、またしても体を洗うタオルだった。くそっどうしてこんな思わせぶりなところに置くんだ!顔がヒリヒリする。父もそうだったが、タオルで体を洗う人の気が知れない。もしゃもしゃして、全然洗った気にならない。
昼の12時まで居ていいと言われたが、そんなに居てもすることがないので家に帰る。帰って赤味噌の味噌汁をすすり(きの)「っあ~~っ。やっぱおいしおすな~」どこの人だ。レストランのレシートを見たら「トリュフナーラ」そんなメニュー名ではなかったはずだ。