木下寄席 きおろしよせ

生で落語を聴く会

歯磨きと「明烏」

2018-04-11 10:12:37 | 豆知識
「明烏」の場面を思い起こして欲しい。うぶな若旦那を吉原に泊めた翌朝のこと。
落語家は吉原の朝「せいせきの悪かった者が起こし番」と言って、歯磨きの所作をする。この場面は江戸っ子の粋を表している。
歯磨き売りは三都ともに小間物売りが扱っていたが、京坂では歯磨きだけを売り歩くことはなかった。
歯磨き売りは江戸の名物といっていい。毎朝早く歯磨きを入れた箱を、緋縮緬の紐で肩にかけ「お早う」と言って売り歩く。
特に、芝居で四代目菊五郎が歯磨き売りになったことから、急に人気が出た。
歯を白くするため房州砂の入った歯磨きを使って、歯が減るほどにこすった。歯磨きを使うかどうかで、田舎者か江戸っ子がわかるとまで言った。
薦っ被りも歯が白くなれば一人前、とさえ言った。
「明烏」は町の札付きの遊び人源兵衛と太助ならではの、朝の場面です。

長屋の話/不動坊

2017-09-27 02:07:48 | 豆知識
落語と住まい
江戸深川資料館で見た長屋と“不動坊”
時代は明治になっても、落語の登場人物の住まいは、江戸の棟割長屋です。入口を入ると一畳半の土間、“へっつい幽霊”に出てくる"へっついがあり、上には換気用の小さな通風口がある。
“不動坊”の舞台はこの長屋である。江戸の通気口からでは吉公を驚かす幽霊を出すのは無理だ。小さすぎるのだ。
元は上方落語だから齟齬が出てくる。大阪くらしの今昔館で見た長屋は、へっついの上の開口は大きく、明り取りでもあり、十分人が下りられるのだ。
江戸の長屋は屋根が板葺きで、幽霊役を含め大人四人がのるには無理がある。上方の長屋は瓦葺きである。
“文七元結”の最後の、長兵衛の女房が隠れる枕屏風は、押し入れのない長屋の布団隠しであり、隙間風を防ぐ道具でもあった。
“青菜”の植木屋の女房が隠れる押し入れがある長屋は、時代が下るわけだ。
こうして、落語をもとに江戸深川資料館を見物してみてはいかがでしょうか。お勧めスポットです。

落語「酢豆腐」 かくやのこうこ

2017-08-05 12:48:22 | 豆知識
落語「酢豆腐」にでてくる“かくやのこうこ”のかくやって何?
銭のない町内の若い連中が、かくやのこうこ(覚弥の香々)で一杯やろうとします。
糠漬けをかき回すのは誰か。食べたいが糠漬けに手を入れるのは嫌な連中は、いろいろ言い訳をします。
香々はお漬物ですが、「かくや」とは何か。
覚弥とは、刻んだ漬物をいう。みそ漬、たくあん、ねか漬などの古漬を刻んで水にさらし、酒、醤油などをかけて食べる。
江戸時代の初め、東照公の料理人岩下覚彌の創始(随・松屋筆記)とも、高野山の隔夜堂を守る歯の弱い老僧のために作られたものから(随・柳亭記)ともいう。“隔夜”堂で、“かくや”か。




落語「青菜」柳陰

2017-07-06 18:42:51 | 豆知識
暑い時期になると、高座にかかる機会が増える「青菜」ですが、そこに出てくる“やなぎかげ”という言葉について、
ひと休みしている植木屋に、主が声を懸けます。
「御精が出ますね」、そして「御酒はお好きか」と言って出されたのが“やなぎかげ”だ。
味醂と焼酎とを混合し、味醂のもろみが完全に熟成する前に焼酎を加えて圧搾濾過して造った。
夏季、冷やして飲む。なおし。《随筆・守貞漫稿》
下戸の身にはその味知るすべなし。