美術の先生は考える

中学美術の授業の実践を中心に、美術について考えたイロイロを紹介できればと思います。

卒業式

2015-03-15 19:00:08 | 日記

先週金曜日、卒業式でした。
今年は卒業生担任でもなければ、在校生担任でもない、初めて"卒業学年所属"という立場で臨みました。
本校のような小規模校では、この立場は微妙です。
たぶん生徒や保護者は学年所属として僕がいることも知らないんじゃないかな?とも思うくらい曖昧です。
今年限りの所属で、普段は教務の仕事優先させてもらっているので、あんまり深く関わっていないんですね。


もちろん授業は3年間担当しましたから、美術の授業に関する色々を思い出し、個々に思う気持ちはあります。
生徒会担当だったので生徒会の執行部員に関しては関わりは深いので、彼らに対して思う特別な気持ちもありました。
が、修学旅行に同行するわけでもなく、学年行事に参加するわけでもない、とにかく曖昧で微妙でした。

そんな立ち位置でできることを、美術教師プライドを持って考えながら臨んだ卒業式。

結果的には色々できたかなと思います。


まず美術の授業で制作した作品により、式に花を添える企画。

卒業が近づいてからの5時間程度で、『記念にカッコイイセルフポートレイトを』という題材に取り組みました。

式場付近に飾る目的も伝え、2~4人の小グループで活動。

1時間目…〔練習1〕とりあえず目的に合う写真を撮ってみる。

2時間目…〔練習2〕撮影技術を学び、カメラの機能を生かしながら撮ってみる。

3、4時間目…作品としての写真を撮る。

5時間目…〔まとめ〕撮り貯めた写真から1枚を選んで印刷する。

この題材では、毎時間グループで場所やテーマ、人、撮り方など撮影の作戦を立てさせること。まとめで本時の反省、次回の授業のプランを考えることを大事に取り組みました。

初めての取り組みでしたが、けっこう良い作品が仕上がっていたと感じます。

その子らしさが見えたり、グループの中で工夫した感じがよく出ていて、ただ撮ったスナップ写真とは全く違った、作品としてのセルフポートレイトを作ってくれました。

 

さて、ではそれをどうやって式場の一部に添えるか?

まずは台紙を作ろうと。ただの模造紙ではなんだかもったいないので、ひと手間加えてみました。

卒業ですから桜をイメージしたものがいいと考え、薄ピンクの模造紙にエアブラシでふわーっと。

写真の邪魔をしないように、くっきりはっきりとは描かない感じに。

で、いったん写真を並べてみたら…

…明らかに台紙が小さいではないですか。

よってもう一枚模造紙を増やして、再度エアブラシ。模造紙三枚使用で、なんとか台紙完成。

これでよし。

で、式場前の壁面に貼ってみる。

しかし、校長に見せると、「美術の授業でこんな目的でやったんだというアピールをもっとすべき」と。

あえて主張しない方が良いと思い、右下の角にちっちゃく載せておいたのですが、そこをもう少しだけアピール。

さらに当日朝。卒業生担任に「今式場見てきたんだけど、あの写真貼らないの?」と聞かれ、「…いや、もう昨日のうちに貼ってたんですけど、気づきませんでした…?」と答えながら、目立たないんだなと反省。取り急ぎお花紙で4色グラデーション花を作って、ちょっとだけ飾り付けてようやく完成。

少し地味な仕上がりだったかな…と思いながらも、まあまあ満足です。

思ったより反響は少なかったように思えますが、今までやってなかった取り組みですし、式だけでは見えることができない卒業生の一面が見えて良かったんじゃないかな。

ちなみにこの写真は、100円ショップの写真用クリアケース(ビニールの袋状)に入れて、簡単にはがせるように貼り付け。

式後に急いではがして、見送りの際に美術部員から一人一人にプレゼントしてもらいました。

 

其の弐。

卒業生を送る会が、昨年までは部活ごとにプレゼント企画を用意して発表する形式でしたが、今年から学年ごとの企画に変わったので、美術部で何かできないかと考えました。

祝詞やメッセージの掲示担当でもあったので、その台紙を美術部で華やかに作らせようと。

水色の模造紙を用意。そこに墨で水墨画風に桜の枯れ木を描いた後、「あとはちぎり絵のように花を咲かせてくれ!」と部員に託しました。

最初は順調に進んでいたのですが、託した翌日から部員たちが卒送会の準備で忙しくなり、部活動が活動不可能に…。

結局続きは全部自分でやりました。

しかし一人でちぎり絵はなかなか進まず苦しいばかり…。

すぐに諦めて、ドリッピングで花を表現することに。

なんとか様になってきたところでストップ。

あまりやりすぎると台紙が絵具で重くなり過ぎてしまうので。

これに届いた祝詞やメッセージを掲示して完成。

こちらもちょっと寂しいので、後ほど周囲を花で飾っておきました。

ここまでやって一安心。やろうと思っていたことはやりきったと思います。

このような美術的な取り組みにより、もちろん卒業を祝いたい、卒業生たちにちょっとでも喜んでもらいたいといった思いが主にありましたが、もう一つ、式に足を運んで下さった保護者や来賓の方々、もっと言うと本校の職員にも、少しでも『美術の力で華やかになったな』、『美術っていいな』と感じてもらいたいといった思いもありました。

実際に彼らがどう感じたかはわかりませんが、ちょっとでも何かを感じてもらえたはず…と信じたいと思います。

 

式自体は多くの涙があり、感動的なものとなりました。

司会としても失敗することなく最後までしっかりと務めることができました。

個人的にはおおむね満足です。

 

主役の卒業生の皆さん、本当におめでとう。

僕一人をとっても、このように色々考えて君たちの卒業式を少しでも良いものにしようとしていたのだから、他の先生方や親たちも、色んなことを考え、僕とは違った様々な形で君たちの卒業を祝う気持ちを表現していたと思います。

たくさんの人たちの思いを感じ、これからの自分の将来を素敵に輝かせる努力をしてほしいと思います。

 

さて、最終的に当日夜の祝賀会で上映した、卒業記念MOVIEが一番反響が大きかったのが事実ですね。わかりやすいですものね…。

文化祭が終わったころから少しずつ進めてきて、多くの人たちに喜んでもらえるものができたので、こちらも満足です。

昨年よりバージョンアップしたとの声もありましたが、それは経験の違いであって、気持ちの違いではありません。もし去年の卒業生でこれを読んでいる人がいたら、誤解しないでくださいね。

…さて、残すはこのMOVIEを卒業生の人数分焼いて、レーベルの印刷もせねば。

離任式にプレゼント予定です。…離任者としてステージに上がっているかもしれませんがね。