日々の生活から

毎日の生活で感じたこと・考えたこと

きみに読む物語 ニコラス・スパークス著

2005-10-02 09:27:06 | 
新潮社
アルツハイマーで記憶が失われていく妻に、時折訪れる奇跡。愛しつづければこその奇跡。それが起こるのは一瞬だとしても、愛しつづけなければ起こらない奇跡。
この話を読むきっかけになったのはAll aboutの年をとってもお互いに愛をはぐくむ夫婦をめざすの記事。
前半の美しい恋物語も良かったが、後半の妻を支えるための苦悶が他人事に感じられなかった。忘れてしまった事柄を一つ一つ教えることが、本人を救うことにはならない。返って忘れてしまったことの大きさに打ちのめされてしまうから。

 わたしが学んだことは、子どもにとっては当たり前のことだった。ようするに人生は小さな一日のつみかさねであって、一日ごとに完結してしまうものなのだ。新しい日がくれば、花や詩を美しいと愛で、動物に話しかけて終わればいい。夢を見て、夕焼けや、さわやかなそよ風とすごしても、それ以上の人生はないかもしれない。しかし何よりも、たまにやってくる晴れやかな日に、古い川のそばにあるベンチで、妻の膝に手を置きながら恋をするよりすばらしい人生があるだろうか。

自分が結婚していた時、「たまにやってくる晴れやかな日」を信じることができなかった。毎日がキュウキュウとしていて、ちょっとした「足りないもの」にばかり目がいっていた。私は欲張りだった。20代、30代で動物に話しかけて一日が終わってしまうのを良しとしているのも考えモノだが、美しいモノを感じる心を失うのも同じように考えモノだ。