財団法人日本漢字能力検定協会は毎年の世相を表す漢字一字を発表している。
今年は「暑」である。
夏の酷暑、いつまでも続く残暑などの自然現象、チリの鉱山の落盤事故で地下700mの熱暑中から全員無事に救出されたころ、小惑星探査機「はやぶさ」が地球再突入の際1万度の高熱に耐え無事帰還を果たしたこと、白鵬の双葉山の連勝記録に今一歩まで肉薄したりバンクーバーオリンピックなどスポーツで熱くなったことなどが理由で「暑」が選ばれた。
ともに人に起因するものであるが、歓迎されるものとされざるものがある。
異常気象は地球の未来を危うくするもので、深刻である。
そんな時、日本語 表と裏で 松尾芭蕉の「秋ちかき心の寄るや四畳半」という句に出会った。
「秋ちかき心」とは、大津の医師木節の庵に集まった、近づいた秋を感じとる心の持ち主のことである。
この句はそういう人たちが自然と庵に集まったさまを見事に描き出している、と著者は言う。
確かに夏から秋に移り行く感じは夏の思い出への感傷と澄んだ空気、紅葉の素晴らしさへ、読書の秋に象徴される意欲的なすがすがしさをもっている。
しかし今年は、夏がいつまでも続き、途端に寒くなるという感じであった。
「秋ちかき」という感じはまったくしなかった。
日本の四季はグラデーションのようにいつの間にか春や秋になるという穏やかな変化が情緒を誘い、四季の素晴らしさを感じさせたものである。
うろこ雲、秋風とともに気温の微妙な変化に季節の移ろいを感じるのである。
これからは俳句の世界でも変化が現れるのかもしれない。
気象の変化は情緒的なものだけであれば我慢もできるが、野菜の高値などの社会問題や地球破壊に向かう前兆現象であればことは深刻である。
環境破壊を食い止める微々たる努力でもしていかなければと感じる。