安倍政権の有力な支持母体と言える「日本会議」に関する本が出版された。
『日本会議の研究』という本だ。この本には、こう書いてある。
(引用)………………………………………………………………………………………………………………………
「右傾化」の淵源はどこなのか? 「日本会議」とは何なのか? 市民運動が嘲笑の対象にさえなった80年代以降の日本で、めげずに、愚直に、地道に、そして極めて民主的な、市民運動の王道を歩んできた「一群の人々」がいた。 彼らは地道な運動を通し、「日本会議」をフロント団体として政権に影響を与えるまでに至った。そして今、彼らの運動が結実し、日本の民主主義は殺されんとしている。〜安倍政権を支える「日本会議」の真の姿とは? 中核にはどのような思想があるのか? 膨大な資料と関係者への取材により明らかになる「日本の保守圧力団体」の真の姿。
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煽り文句・嫌味・当てつけとしてはなかなかのものだ。安倍政権に関心がある人ならば、この本を読んでみようという気になるだろう。
そしてこの煽り文句を読むと、まるで所謂「左派」系の出版社が出したのかと勘違いするだろう。
しかし、この本は《扶桑社》、産経新聞のグループの会社で出している。
この本の出版に対して、「日本会議」が出版差止め請求をすると息巻いている。
(引用)
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平成28年4月28日 日本会議 事務総長 椛島有三
扶桑社新書「日本会議の研究」についての申し入れ
日本会議では、扶桑社・育鵬社が発行する中学校教科書、季刊「皇室」など貴社の各種刊行物の普及拡販に協力してきたが、「日本会議の研究」なる書物が扶桑社から刊行されることを聞き及び、驚きと失望を禁じることができない。 「日本会議の研究」は、一部の学生運動・国民運動体験者等の裏付けの取れない証言や、断片的な事象を繋ぎ合わせ、日本会議の活動を貶める目的をもって編集された極めて悪質な宣伝本であり、掲載されている団体・個人の名誉を著しく傷つけるものである。 ことに、日本会議が、宗教的背景を持つ特定の人物によって壟断されていると結論付けていることは、全く事実に反し、日本会議の会員はもとより多くの読者にも誤解と偏見を抱かせる内容である。もとより、言論の自由、出版の自由は憲法で保障されているが、事実無根の内容に基づく出版が社会に許容されるはずもなく、本会はここに強く抗議し、扶桑社に対し直ちに出版の停止を求める。
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《扶桑社=フジ・産経新聞vs日本会議》の対立になっている。
この間の経緯に付いては、つぎのようにレポートされている。
政権に近い保守団体が出版停止を要求 話題の本「日本会議の研究」 (BuzzFeed Japan) - Yahoo!ニュース
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(以下、引用。「 BuzzFeed Japan 5月4日(水)19時13分配信)
政権に近い保守団体が出版停止を要求 話題の本「日本会議の研究」
4月28日、出版社「扶桑社」にFAXで申入書が届いた。差出人は「日本会議事務総長 椛島有三」。扶桑社から出たばかりの菅野完さん著『日本会議の研究』の出版停止を求めるものだった。【BuzzFeed News / 石戸諭】
本は、菅野さんによるウェブ上の連載をまとめたもの。日本会議のルーツや歴史、彼らが展開してきた保守系の市民運動について取材、検証している。連載時にはなかった抗議が、なぜか出版直後に送られた。日本会議による申入書の趣旨はこうだ。この本では、日本会議について裏付けの取れない証言を並べ、活動を貶める目的で編集されており、団体・個人の名誉を傷つける。「日本会議が、宗教的背景を持つ特定の人物」に束ねられているという結論部分に対し、特に強く反応しており「全く事実に反している」と主張。直ちに出版停止するよう求めている。
1冊の研究本に対し、即座に出版停止を求めた「日本会議」は民間の保守派団体だ。彼らのホームページによると、「全国に草の根ネットワークをもつ国民運動団体」であり、「日本会議は、美しい日本を守り伝えるため、『誇りある国づくりを』を合言葉に、提言し行動します」とある。すみやかな憲法改正、日本会議の女性組織による夫婦別姓反対の集い…。活動方針や彼らが進める国民運動は、ホームページに公開されている。
日本会議が注目を集めるのは、政権と近い関係にある点だ。朝日新聞によると「超党派による『日本会議国会議員懇談会』」のメンバーに、2015年9月時点で、安倍晋三首相を筆頭に、閣僚、自民党役員らが名を連ねている。
日本会議「出版停止を求めたのは事実。抗議は、申入書だけにとどまらない。申入書とは別に『日本会議の研究』に登場する人物から、代理人を通じて出版差し止めを求める法的文書が扶桑社に送られているという。BuzzFeed Newsの取材に対し、複数の関係者が認めた。
なぜ、日本会議はここまで抗議をするのか。」(引用終わり)。
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そして取材者が両者に尋ねたが、両者はノーコメント、だという。
この本の内容自体は、よく取材して纏まっているが、私にはさほど驚きはない。 扶桑社が出版したというので、一部では驚きが走っている。ネット上でも、この本に関して既に多くの記事が書かれている。したがって私があえて、書く必要もないかとも思う。右派陣営の仲間割れ・分裂、「改憲運動」の分裂という観点から、この「話題」について書いておく。(日本右派、安倍政権に注目している一人として、この動向を無視すべきでないと考えて、取り上げる。)
まず、 どこまで《扶桑社=フジ・産経新聞vs日本会議》の対立・が広がっているのか、というのが私の感想だ。
扶桑社は言わずと知れた産経新聞・フジテレビの関連会社だ。フジ・産経グループといえば、右派の中核的勢力であり、産経新聞は常に右派的言辞を煽りまくり、自衛隊を礼賛する新聞だ。国家主義を露骨に歌い上げている新聞だ。また最近ではザクザクというサイトを作り日本の政治・社会に影響力を行使している。
この新聞社ないし右派陣営の中では、既に、去年の冬から内部対立が拡大していたように思われる。田母神俊雄氏の事件だ。《田母神俊雄vs.チャンネル桜》。公職選挙法違反で田母神俊雄被疑者が立件された。ただし、チャンネル桜側が問題にしていた業務上横領罪については、起訴されていない。検察としては、おそらく業務上横領罪については、内部問題であり起訴して右派陣営の中を暴露したくなかったのではないか、と私は推測する。
<iframe class="embed-card embed-blogcard" style="max-width: 500px; height: 190px; width: 500px; margin: 10px 0px; display: block;" title="「田母神俊雄元空幕長に冷たい産経新聞、なぜ⁉️」〜右派の方の疑問にお答えします。 - かえる日記" src="http://pikoameds.hatenablog.com/embed/2016/03/08/220944" frameborder="0" scrolling="no"></iframe>pikoameds.hatenablog.com
結論としては、《産経新聞 vs. 生長の家=日本会議の実働部隊》。これからどう展開するか? 政権の支持母体に関連するものであり、憲法「改正」の動向として重要だろう。
また、産経新聞は憲法「改正」の動きから実質的に離脱し別の道を行こうとしているのか?
さらに、米国世論、特にトランプ旋風が実現しようとするものとの関連、日本の独自化、自主武装・核兵器保持の路線(橋下徹氏)との関連で見過ごせない動きが出るおそれがある。国民(人民)は大同団結を。