青春や恋などをテーマとした曲を歌うことにためらいを感じる世代であるから、自然をすばらしさを表現した「春を呼ぶ流水」を堂々と歌う吉川忠英を尊敬する。「AQUA FACE」に収録されている「春を呼ぶ流水(inst版)」を聴いていると細やかな音使いがなされ、コードをなぞっただけのインストではなく、歌詞のある原曲とは別物のオリジナルな楽曲となっている。
出だしはAコードでA、AM7、A7の変化から始まり、その後Bm7→C#7、DM7→D#dim→C#m7→F#7、B7→E7というふうに展開する。そして後半はAコードからCコードに転調する。この転調部分がカッコいいので思わずここだけを取り出して弾いてしまうほどだ。Cコードになると曲調は完全にオリジナル曲となり、歌は下手だが知らずに口ずさんでいる。
エストレリータ(にじ)の時もそうであったが、吉川忠英の場合、遙か以前にリリースされたアルバムを聞いて、その曲に魅せられることが多い。それだけ時代を超えても色褪せない音楽をやっているということなのだろう。とはいいつつ、子供が里帰りした際に、はっぴいえんどの「風をあつめて」を弾いていると、新しい曲はないのか?、進歩がない!と言われる。確かに、「風をあつめて」は子供が幼児の時代から弾いていたかもしれない。