在日米軍基地のいくつかの司令部の国旗掲揚の場所には日本、アメリカの国旗の他に水色の国連の旗が掲げられています。これを初めてみた当時は単に国際連合のどこかの機関が在日米軍内に間借りしていると思って深くは考えてこなかったのですが、気になっていました。
タイトルに惹かれてこの書籍を手にとって読んでみると、今まさにその認識が誤りであることに気が付きました。基地従業員である日本人でもこの本に書かれている事実について知っている人は少ないのではないかと思います。基地の使用権や訓練コーディネイトに関係している人であれば知っているはずです。
本書には、なぜ在日米軍基地に国連の旗がはためいているのかその歴史を明らかにするとともに、日本における国連軍とはなにか、現在でもその効力が有効であり、現在の日本の周辺で起きている防衛に関する出来事にも密接な関係があること、更に沖縄の普天間から辺野古への基地移転に重要な要素になっていることが詳細に書かれています。
いろいろな興味深いことがあったのですが、個人的に謎が解明できたのが第7章で語られる民主党政権下で時の首相鳩山由紀夫が国外、最低でも県外移設と風呂敷を広げた普天間基地移設が、その後間もなく取り下げられたことです。
当時、ずいぶん大きなことを自由に表明したなと感じたのですが、すぐに取り下げられたことに違和感を感じていました。民主党が政権を取った直後であり、首相にになれば自由に国政を動かせると勘違いしている感があり、事務方である当時の外務省と情報の交換がうまく行っていなかったのでは、日本の防衛上触れることのできない闇のような事実を知ってしまったのではないか、などと思っていたのです。
この行為が原因でその後の沖縄と普天間辺野古基地移転問題がこじれて行きました。
本書では、まだ実証されていな事実として首相鳩山由紀夫が実は日本における「国連軍」の存在を知らなかった、そして普天間の基地は実は国連軍も使用する基地の一つであることも知らなかった、そのため基地移転における大前提の一つであることを知らぬまま風呂敷を広げた、としています。そもそも、国連軍の存在理由を知っていたのであれば「国外移転」などという言葉が出たはずがありません。闇ではなく、きちんとした歴史と事実に基づいた重要な事実だったのです。
その後政権を失った民主党及び元首相鳩山由紀夫等は、この件について何も語っていません。
第二次世界大戦が終わり80年、朝鮮戦争が始まって75年になろうとしています。国連軍の旗が在日米軍基地にはためいている限り、日本の戦後はまだ終わっていないのです。