こんばんは、ジニーです。
秋、という季節はもう日本にはないのかも知れない。
そんな気がしてしまうほど暑い日が続いていますが、最近は朝夕が涼しくなってきています。
秋の気配というやつでしょうか?
読書したくなりますね。
さて、今回は井上真偽さんの「その可能性はすでに考えた」の読書感想です。
タイトルから何となく伝わるものがありますが、ちょっと変わったミステリーです。
普通、ミステリーといえば時間が起こり、その謎を解くというのが流れです。
犯人がいて、トリックを看破していくというところに面白さがありますよね。
ところが本作ではちょっとアプローチが違う。
謎の否定を証明して見せるのです!
主人公は上苙丞(うえおろじょう)という探偵。
青髪にコート姿、厨二病要素たっぷりの人物で、奇跡の実在を信じてやまない。
この探偵は奇跡を証明するために、人の手で行われた事件であることを反証とともに否定していくのです。
つまり、普通のミステリーの流れを真っ向から逆らっていくという手法の作品なのです。
事件は、とある山間に拠点を構えるカルト教団での集団殺人事件です。
ここに巻き込まれるのではなく、その事件の唯一の生き残りである少女の当時の記憶があり得るものなのかを証明してくれという依頼が舞い込むのです。
すでに起きた事件に対して奇跡を証明する。
依頼を受けて数日後、奇跡の証明を辞書ほどの報告書にまとめて依頼人に提出します。
そしてここから本作は多重解決ミステリーとなっていきます。
まず、奇跡の証明とは何かというところからになりますが。
考え得る人の手による犯行を全て否定できたらそれはすなわち奇跡であるという筋書きです。
それを報告書にまとめているのですが、後から後から計4人の人物が現れ、それぞれの推理にて人の手による犯罪だと唱えられます。
この多重解決をことごとく否定していくのです。
一言で否定と言っても、「違うと思う」なんていう感想や根拠のない言葉では否定できません。
事件発生後に警察が介入して確認された状況証拠や物証などをもとに理論を展開し、根拠に基づいた形で、それが成り立たないと言わなければ否定、反証にはなりません。
これが本当に難しいことで、推理については確証のないことでも道理が通っていれば、そういう可能性もあると言えるのですが、否定においては確証のないことを論じた時点で空論となってしまいます。
もうね、こんなアプローチの作品を書くなんて、正気の沙汰じゃないと感じてしまいます。
果たして上苙丞は奇跡を証明できるのか?
なんか小難しいこと書きましたが、際立ったキャラ設定やコメディ的な要素もある作品なので、意外とライトに読めてしまいます。
これまでになかった読書体験を本書を通してしてみてはいかがでしょう?
と、書きましたが、本作はどうやらシリーズものの2作目だったようです。
読み始めからそうなんだろうなと思っていましたが、やはりそうだったようです。
続きでなくても楽しく読めましたが、まずは一作目である「恋と禁忌の述語論理」を手にとってからの方がいいと思います。
僕も遅からず手にとってみようと思います。