ビストロ レアール

石川県小松市にある「ビストロ レアール」のシェフがつづるあんなことこんなこと

公園デビュー

2006年04月23日 | シェフのコラム
私が料理人になり始めた頃

同僚が4人

その中でもトップを取ってやると

当時は勢い込んでいたものです

人より早く

人より多く名前を呼んでもらう為に色々な事で

努力したつもりです

何時 ストーブ前で料理を作らせてもらえるか

いいやその前に

ストーブ前の先輩のサイドにつかせてもらえるか

そのために自分の仕事を早く終わらせて

”なにか手伝う事無いですか?”などと

おべっかを使う毎日

ある日 

”おい お前フライパン振ってみるか?”と言われ

ピラフを作らせてもらえる事に

見るとするとでは大違い

フライパンにあるはずのお米は半分に

”やっぱ 駄目か そのうちにまた振らせてやるよ あ 掃除しとけよ”



せっかくもらったチャンスをフライパンにふりじゃなく ぼうにふりってしまい

くやしくて 

休みの日に

家の庭で生米を入れたフライパンで練習

お米を入れたフライパンを

振るべし

振るべし

振るべし

振るべし

「なにやってんのー! あんたすずめに餌やってんじゃないのよー! お米もったいないじゃない !」

と農家出のお袋の怒りの一声

しぶしぶと フライパンを持って近くの公園へ

公園の砂場に行ってフライパンに砂をいれ

イチ ニ イチ 二 1 2 1 2 1 2 1 2

こぼれる砂 舞い立つホコリ

公園に子供を連れて遊びに来ていた奥さんの

自分の子供を抱えて足早に去って行く際に見せた

あの冷たい眼差し

「な な なにー あの人 フライパン持って イチ 二 イチ 二って 呪文の様にいって 危ないひとじゃないの?」



思われても仕方が無かったように思います

そして またストーブ前から先輩のお呼びがかかり

私はあの巨人の星の

星 ひゅうまが 大リーグ養成ギブスで鍛え

消える魔球を投げた時のごとく

みごとに

ピラフを煽ることが出来たのです

ここで

公園にお子様と遊びにいらしていたお母様お詫び致します

あの時 公園デビューをした時には子供はおらず

今では一応 私も人並みに結婚し子供も授かり

あの時とは違う公園デビューを果たし

お店も持てるようになりました

どうもありがとうございました。