南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

高額対人賠償判決例の最高額更新

2012年05月28日 | 未分類
自保ジャーナルという、交通事故の裁判例雑誌では、高額対人賠償判決例を公表しています。

これまで最高は3億9725万円だったのですが、自保ジャーナル1870号で5億2853万円というケースがでました(横浜地裁平成23年11月1日判決)。

他のケースはほとんどが後遺障害のケースなのですが、このケースでは、死亡事故でした。

死亡事故で損害賠償額が高いのは、逸失利益が高額となるケースです。
お亡くなりになった当時の年収が高ければ、逸失利益が高くなります。
つまり、収入が高い方はそれが反映されて、逸失利益も高額になるというのが、判決のルールです。

このケースでは、被害者は、開業医で、基礎収入は5548万円と認定されています。

これにより、逸失利益のみで4億7800万円余りとなり、損害合計額が5億2853万円となったわけです。

もっとも、高額対人賠償判決例では、過失相殺前の数字で把握されるために、過失相殺が大きい場合はその分だけ引かれることとなります。
(本ケースでは被害者に40%の過失が認定されています)。


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無保険車傷害保険の最高裁新判例

2012年05月04日 | 未分類
無保険車傷害保険について最高裁の新判例がでました

平成24年4月27日判決

1 損害の元本に対する遅延損害金を支払う旨の定めがない自動車保険契約の無保険車傷害条項に基づき支払われるべき保険金の額は,損害の元本の額から,自動車損害賠償責任保険等からの支払額の全額を差し引くことにより算定すべきである
2 自動車保険契約の無保険車傷害条項に基づく保険金の支払債務に係る遅延損害金の利率は,商事法定利率である年6分と解すべきである



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裁判官の転勤

2011年12月05日 | 未分類
裁判官もお役所務めなので、転勤があります。

通常の転勤時期は、3月なのですが、ときどき通常の異動時期でもないのに、転勤になって、担当から外れるということが起こります。

この場合でも、それまで原告、被告が提出すた準備書面や証拠は、そのまま引き継がれます。
ただ、裁判官の考え方は引き継がれません。

裁判官は独立しているので、訴訟の進め方や争いとなっている点についての判断などは、後任の裁判官に任されることとなります。

裁判官は、転勤に伴い、前の裁判官が担当していた記録を全て引き継ぎます。

裁判官の担当事件は100件とか200件といわれていますので、記録に目を通すだけでも大変な作業ですが、一刻も早い解決を当事者は望んでいるのですから、迅速に対応してほしいものです。

なお、裁判所の人事
http://www.e-hoki.com/affairs/index.html
で確認することができます。


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黙示の合意を否定した高裁判決

2011年05月25日 | 未分類
名古屋高裁平成22年11月26日判決(自保ジャーナル1846号)

加害者側からは、「任意保険会社から支払われた金額について黙字の合意があり、元本に充当すべきだ」という主張が出ることが多い。

上記判決は黙示の合意を否定した(=元本からの充当を否定した)。

「控訴人は、任意保険は項目を特定して支払われているから、元本から充当する旨の黙示の合意があったと主張する。

 しかし、一般に、不法行為の被害者は、損害の元本に対する遅延損害金について明確に理解していないのが通常であるから、控訴人が主張するような事情があったとしても、そのことから元本に充当する旨の合意があったとは言えない」


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脊柱管狭窄と中心性脊髄傷害

2010年11月22日 | 未分類
 中心性脊髄傷害の後遺障害を負っている場合に脊柱管狭窄が素因減額の対象となるかという問題が浮上することがあります。

 この問題について自分なりに裁判例を調べてみました。

1 素因減額を否定した裁判例として、以下の3つの裁判例をみかけました。
・東京地裁 平成4年12月17日判決
   事件番号 平成元年(ワ)第16413号、
        平成2年(ワ)第15098号
   <出典> 自保ジャーナル・判例レポート第110号-No.1
事故前は健康であり、脊柱管狭窄は病的なものではなく、症状もなかったことか
 ら、素因による減額をすることは相当でないとされた事例。

・東京地裁平成16年 2月26日判決(交民 37巻1号215頁)は、脊柱管狭窄のあった被害者について、素因減額を否定した。
その判示は以下のとおりである。
「原告には加齢性による脊柱管狭窄、後縦靭帯骨化等があり、それと本件事故による衝撃があいまって、原告の症状が出現したものと認められることは前記のとおりである。しかしながら、前記の原告の加齢性の変性が通常の加齢に伴う程度を超えるものであったことを認めるに足りる証拠はない(かえって、C医師の意見書によっても、原告の脊柱管狭窄の程度は年齢相応の変化であったとされている。)。そうすると、本件事故の加害者である被告に、被害者である原告の損害の全部を賠償させることが公平を失するとまではいえないから、本件において民法七二二条二項の過失相殺の規定を類推適用して、素因減額をするのは相当ではない。」

・大阪地裁平成20年8月28日判決(自保ジャーナル1784号)

2 一定割合で考慮で考慮したものとして、以下の裁判例がありました。
大阪地裁 平成3年12月16日判決
事件番号 昭和63年(ワ)第374号
   <出典> 自保ジャーナル・判例レポート第101号-No,5
右事案の損害額算定に当たり、治療費、入院付添費、入院雑費、通院交通費は素
因減額を否定し、休業損害は素因3割減額、後遺症逸失利益、慰謝料は素因の寄
与を考慮されて算定された事例。

3 30%の素因減額を認めたものとして、以下のものがありました。
・東京地裁 平成13年4月24日判決(確定)
   事件番号 平成11年(ワ)第4574号 損害賠償請求事件
   <出典> 自動車保険ジャーナル・第1405号
事故前無症状であった「脊柱管狭窄症、後縦靭帯骨化症」が治療程度、期間、後
 遺障害に影響を与えたものと30%の素因減額を認めた。
・東京地裁 平成16年12月8日判決(確定)
   事件番号 平成12年(ワ)第18523号 損害賠償請求事件
   <出典> 自動車保険ジャーナル・第1589号
             (平成17年5月19日掲載)
50歳男子鳶杭打ち職人が乗用車を運転停車中、被告乗用車に軽微追突され、頸
 髄不全損傷を発症、椎弓形成術等から5級後遺障害を残したとする事案で、併合
 6級後遺障害を残したと認定するが、肉体労働従事での加齢に加え、先天的な脊
 柱管狭窄の状態にあったが、事故前治療を受けていたなどの事情は認められない
 ことから、30%の割合で素因減額すると認定した。
・大阪地裁 平成18年9月25日判決(控訴和解)
   事件番号 平成14年(ワ)第6215号 損害賠償請求事件
   <出典> 自動車保険ジャーナル・第1702号
                (平成19年9月13日掲載)
脊柱管狭窄に外力が加わって、症状が発現したとの医師の診断等から、過失相殺
 を類推適用し「損害の3割を減額する」と素因減額を適用した。

4 40%減額を認めたものとして以下のものがありました。
・大阪地裁平成15年1月24日判決(自保ジャーナル1494号)
・大阪地裁 平成16年9月22日判決(控訴中)
   事件番号 平成15年(ワ)第11798号 損害賠償請求反訴事件
   <出典> 自動車保険ジャーナル・第1588号
             (平成17年5月12日掲載)
 43歳男子公務員バス運転手が、乗用車で信号待ち停車中、わき見運転の被告乗
 用車に追突され、頭部外傷Ⅰ型等で併合7級後遺障害を残す事案で、後縦靱帯骨
 化症と脊柱管狭窄と診断され、脊髄症状発現にかなり近い状態であったこと、ま
 た障害の程度や治療長期化により、無症状であった後縦靱帯骨化症が大きく寄与
 しているものと、4割の素因減額を適用した。
・神戸地裁平成21年9月28日判決(自保ジャーナル1833号130ページ)
・東京地裁平成22年3月17日判決(自保ジャーナル1828号124ページ)
 事故前に既に症状が出ていたと認定した事例

5 60%減額を認めたものとして以下の裁判例がある。
  水戸地裁土浦支部 平成16年2月20日判決(控訴中)
   事件番号 甲事件 平成13年(ワ)第180号 損害賠償請求事件
        乙事件 平成13年(ワ)第352号 損害賠償請求事件
   <出典> 自動車保険ジャーナル・第1537号
                 (平成16年4月15日掲載)
 軽微な事故態様、当初の症状と手術、その後の症状との「因果関係が認められる」
が事故前からあった「著明な脊柱管狭窄、椎間板ヘルニア」の「素因が本件事故
による損害の拡大に寄与した割合は6割」と認定した。


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両下肢麻痺1級の付添費(参考裁判例)

2010年10月05日 | 未分類
肺塞栓症、両下肢麻痺等で1級の後遺障害のある被害者の付添費(介護料)を次のように認めた裁判例を見かけましたので、紹介します。
(神戸地裁平成21年2月23日判決自保ジャーナル1825号39頁)

・入院付添費 日額6000円
・症状固定後2年間 日額8000円
・その他 年間672万8220円(日額1万8433円)

症状固定後が2年間とそれ以降で分かれているのは、被害者が63歳女性で、長男が症状固定後2年間は自宅介護に専念しているが、それ以降は長男が仕事につき、夜間の介護を職業介護人に依頼するという状況が前提となっています。

裁判所は、職業介護を必要とするのは、平日であると判断し
平日=1万9647円+3000円=2万2647円
の介護料を認めています。
このうち1万9647円というのは、厚生省の告示である
「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」
(平成12年2月10日厚生省告示第19号)により算出した金額で、3000円というのは、長男が勤務時間外のときにする在宅の付添費です。

土・日については、長男が介護することを前提として日額8000円の介護料を認めています。


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治療が終了していない場合に再び事故にあった場合

2010年09月21日 | 未分類
第1の交通事故で怪我を負って、治療をしていたところ、再び事故にあって(第2事故)、症状が悪化したというような場合、それぞれの加害者に対してどのように請求できるでしょうか。

この点について、参考になる裁判例として
横浜地裁平成21年12月17日判決(自保ジャーナル1820号)があります。

同判決のケースは
第1事故 平成16年6月5日
第2事故 平成16年8月30日
第3事故 平成16年9月10日
という事故にそれぞれあったもので、被害者は加害者が共同不法行為だと主張しました。
しかし、裁判所は共同不法行為の成立は認めず、それぞれの加害者に対して請求できるだけだとしました。

そして、全体の損害を算出して、それぞれの事故の寄与度が
第1事故 50%
第2事故 30%
第3事故 20%
としました。

例えば、全体の損害が100万円であれば
第1事故の加害者に対し 50万円
第2事故の加害者に対し 30万円
第3事故の加害者に対し 20万円
を請求できるという解決方法を示しました。


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交通事故相談センターへの示談斡旋申立てと時効

2010年09月14日 | 未分類
時効になると損害賠償を請求できなくなるので、注意が必要です。

後遺障害が残る場合は、症状固定時点から、時効を計算すると考えられており、3年が経過すると時効が成立します。
つまり、症状固定から3年以内に、訴訟をするなどの手を打っておかなければなりません。

日弁連の交通事故相談センターに示談の斡旋申したてをしたことで、時効が中断するのか否かが争われたケースがありました。

横浜地裁判決は、時効中断を否定しました。
つまり、時効が完成し、被害者は損害賠償請求ができないというのです。

その理由としては
①交通事故相談センターへの示談斡旋申立ては、裁判上の請求又は裁判上の請求に準じるものとはいえない。
②交通事故相談センターへの示談斡旋申立ては、同センターへの調整を求めるもので、加害者に対しての権利行使の意思が明確でなく、催告としての効力も認められないというものです。
(横浜地裁平成21年12月27日判決自保ジャーナル1820号)

このように、交通事故相談センターに斡旋申立をしても時効は進行してしまいますから、時効にならないように注意が必要です。


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高次脳機能障害は否定されたがPTSDを認めた裁判例

2010年09月08日 | 未分類
PTSDが認められた裁判例をみかけましたので、紹介します。
大阪地裁堺支部平成22年2月19日判決です(自保ジャーナル1820号16頁)。

このケース、平成17年に訴訟が始まっていますが、判決がでたのは平成22年で、一審判決がでるのに5年近くかかっています。
判決の内容をみても、医師の意見書が多数提出され、最終的には鑑定にもなっています。

PTSDが認められたのは、鑑定人がPTSDを認めたということが一番大きいと思います。

等級としては9級を認め
労働能力喪失率が35%
労働能力喪失期間は「PTSDが非器質的後遺障害であること」から10年に制限しています。
 以前ご紹介した「非器質性精神障害9級を認めた裁判例」と同じ論理です。

この裁判例でも、素因減額がされており
40%減額(60%請求できる)
されています。

理由としては「被害者のPTSDの発症は、事故前の被害者の長男の自殺。これを原因として被害者が反応性うつ病にかかっており、それらが相当程度寄与していたから」としています。

このように、非器質性精神障害では
① 労働能力喪失期間の制限
② 素因減額
という手法が裁判例では使用されることがほとんどです。



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非器質性精神障害9級を認めた裁判例

2010年08月30日 | 未分類
 自保ジャーナルで、非器質性精神障害9級を認めた裁判例をみかけましたので、紹介します。(横浜地裁平成22年5月27日判決 自保ジャーナル1828号)

1 このケースの主な争点は、低髄液圧症候群が認められるかでしたが、裁判所は、交通事故で低髄液圧症候群となったのではないと判断しています。

2 一方、被害者の後遺障害として
脳の器質的損傷を伴わない精神障害(非器質性精神障害)があることは認めました。
その等級は9級としています。(労働能力喪失率35%)
非器質性精神障害は、9級、12級、14級の3つの等級があり、9級は最も重いものです。
 労働能力喪失期間は、「原告の精神障害が器質性のものとは認められないことからすれば、今後の改善の可能性もあると考えられるから」という理由で10年に制限されています。

3 非器質性精神障害の場合
 ”素因減額”
といって、過失がなくても、過失相殺のように、一定額が減額されることがあるのですが、このケースでも素因減額の適用がされ、40%が減額されました。(つまり、被害者が請求できるのは60%ということ)。

素因減額をする理由としては
①事故直後の被害者の症状は軽度
②9級に相当するような後遺障害は、本件事故だけで通常発生する程度、範囲を超えている
③事故前から原告にはうつ病の精神状態があった
というものです

4 低髄液圧症候群が認定されることは、現在の裁判例の状況からは、かなり厳しいものがありますが、このケースのように非器質性精神障害という認定をえられる場合も、一定程度あるのではないかと思います。


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