~フォーレの歌曲から~
漁夫の歌
ひめやかに
オーラ
ゆりかご
リディア
秋
ノクチュルヌ
夕ぐれ
夢のあとに
墓場で
消え去らぬ香り
月の光
憂鬱
恍惚
歌曲集「幻想の地平線」
バリトン:シャルル・パンゼラ
ピアノ:マドレーヌ・パンゼラ
LP:ANGEL RECORDS GR-34
このLPレコードは、“世紀の巨匠たち”シリーズ(GRシリーズ)の一枚である。同シリーズは、EMIがSPレコード時代に収録した巨匠と呼ばれていた名演奏家の録音を、新たにLPレコードに収録し直したもの。バリトンのシャルル・パンゼラ(1896年―1976年)が、妻のマドレーヌ・パンゼラのピアノ伴奏で、フォーレの歌曲を歌ったのがこのLPレコード。シャルル・パンゼラは、スイス出身。パリ音楽院で学ぶことになるが、この時の院長がフォーレであった。このことからパンゼラは、フォーレから歌曲集「幻想の水平線」の献呈を受け初演し、絶賛を浴びた。このことで、パンゼラの名前は一躍知れ渡ることになる。また、同窓生には後でパンゼラの妻となるピアニストのマドレーヌ・バイヨがおり、生涯に渡ってパンゼラのピアノ伴奏役を演じた。同音楽院で学び始めたころ、第一次世界大戦が勃発し、パンゼラは志願兵として一時参戦することになる。戦争から戻り、その後、同音楽院を終了し、1919年にパリのオペラ・コミック座でデビューを果たす。オペラ・コミック座では、数々の役を演じたが、中でもドビュッシーのオペラ「ペレアスとメリザンド」のペレアス役がはまり役となり、以後、各国でも演じ絶賛を浴びる。パンゼラは、バリトンでもリリック・バリトンと呼ばれる高い音域のバリトン歌手であった。パリ音楽院で学び、フランスを中心に活躍したので、パンゼラは、フランスのオペラや歌曲のスペシャリストとして、日本でも多くのファンを有していた。フランスの歌曲は、ドイツのリートとは異なり、茫洋としたメロディーが延々と続くイメージがあるが、パンゼラにかかると、その印象は一変し、曲の表情が明るく豊かで、明確な輪郭を描くようになる。録音も活発に行い、このLPレコードのフォーレの歌曲のほか、コルトーをピアノ伴奏にシューマン:歌曲集「詩人の恋」のほか、モーツァルト、ベートーヴェン、ワーグナー、ベルリオーズなど幅広いレパートリーにわたっており、一般的なフランスの歌手とは少々毛色が違っていた。このLPレコードに収録された時期は、パンゼラの全盛時代。このLPレコードでのパンゼラの歌声は、いずれも表情豊かで、生き生きと、輪郭のはっきりとした歌唱法に徹している。日本人にとって比較的分かりにくいフランス歌曲を、身近に感じさせてくれる歌い方だということが実感できる。このLPレコードの最後に、フォーレが若きパンゼラに献呈した生涯で最後の歌曲集「幻想の地平線」が収録されている。(LPC)