ヨハン・シュトラウスⅡ世:円舞曲「春の声」
サン=サーンス:「うぐいすとばら」
ヴェルディ:「煙突掃除夫」(歌曲集「6つのロマンス」の第4曲)
ゴダール:「ジョスランの子守歌」(歌劇「ジョスラン」から)
アルディーティ:「パルラ(語りたまえ)」
ヨハン・シュトラウスⅡ世:「侯爵さま」(喜歌劇「こうもり」op.56から)
ヨハン・シュトラウスⅡ世:田舎娘の役ならば(喜歌劇「こうもり」op.56から)
ヨハン・シュトラウスⅡ世:円舞曲「ウィーンの森の物語」
スッペ:愛はやさし(喜歌劇「ボッカチオ」から)
ドヴォルザーク:月に寄せる歌(歌劇「ルサルカ」から)
マイアベーア:影の歌(歌劇「ディノーラ」から)
ソプラノ:リタ・シュトライヒ
合唱:RIAS室内合唱団
指揮:クルト・ゲーベル
管弦楽:ベルリン放送交響楽団
録音:1958年5月19日~23日/28日~30日、ベルリン、イエス・キリスト教会
LP:ポリドール(ドイツ・グラモフォン) MGW 5250
これは、往年の名ソプラノ、リタ・シュトライヒ(1920年―1987年)の名唱を、寛ぎながら聴ける、誠にもって楽しくもあり、懐かしい香りがするLPレコードである。シュトライヒは、旧ソ連ウラル地方パルナウルで、ドイ人の父、ロシア人の母のもとに生まれた。幼時に両親ともどもドイツへ戻り、声楽の勉学に励む。1943年にデビューし、1945年ベルリン国立歌劇場の舞台を踏んだのだが、その時に注目を浴びることになる。透き通るような美しいコロラトゥラの声と知的でチャーミングな容姿は、たちまちにして聴衆の心を掴んだのだ。彼女の絶頂期は、1950年代から1960年代にかけてであり、この録音はその真っ只中に行われたもの。このため、このLPレコードでは全盛期の彼女の美声を心置きなく堪能することができる。ここで取り上げられている曲の多くがお馴染みの曲であり、古き良き時代の雰囲気に溢れ返っている。昔は、こんな楽しい曲がしょっちゅうラジオから流れていた。私などはリタ・シュトライヒという名を聞いただけで、昔のことが走馬灯のように浮かんできてしまう。そのリタ・シュトライヒの清々しい歌声が、LPレコード独特の柔らかい音質で今でも鑑賞できることは何とも幸せなことだ。最初の曲のヨハン・シュトラウスⅡ世:円舞曲「春の声」は、ヨハン・シュトラウスⅡ世の後期の代表作でもともとは声楽付きの円舞曲。サン=サーンス:「うぐいすとばら」は、ヴォカリーズ形式による歌詞なしの曲。ヴェルディ:「煙突掃除夫」は、歌曲集「6つのロマンス」の中から第4曲目の曲。ゴダール:「ジョスランの子守歌」(歌劇「ジョスラン」から)は、甘美な旋律で親しまれている曲。アルディーティ:「パルラ(語りたまえ)」は、ワルツで書かれている軽やかな愛の歌。ヨハン・シュトラウスⅡ世:「侯爵さま」「田舎娘の役ならば」(喜歌劇「こうもり」から)は、小間使いアデーレ役を十八番としたシュトライヒがチャーミングに、しかも洒脱に歌う。ヨハン・シュトラウスⅡ世:円舞曲「ウィーンの森の物語」は、1868年に作曲されたウィンナワルツのお馴染みの名品。スッペ:愛はやさし(喜歌劇「ボッカチオ」から)は、わが国では昔からお馴染の曲。ドヴォルザーク:月に寄せる歌(歌劇「ルサルカ」から)は、抒情的で清らかなアリア。マイアベーア:影の歌(歌劇「ディノーラ」から)は、コロラトゥラ・ソプラノの名アリア。このLPレコードは、これらの名品を絶頂期のリタ・シュトライヒが清らかに歌い上げる、今となっては誠に貴重な録音だ。(LPC)