ドヴォルザーク:チェロ協奏曲
チャイコフスキー:ロココの主題による変奏曲
チェロ:ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1968年9月21、23、24日、ベルリン、イエス・キリスト教会
ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ(1927年―2007年)は、旧ソ連のアゼルバイジャン共和国の出身で、カザルスと並び20世紀を代表するチェリストとして名高い。モスクワ音楽院で学び、全ソビエト音楽コンクール金賞、バッハの無伴奏チェロ組曲の演奏でスターリン賞を受賞するなどの輝かしい受賞歴を有し、一演奏家として以上の評価を与えられた大演奏家である。その後米国に渡り、指揮者活動などするうち、ソ連政府より国籍を剥奪されてしまうが、それも1990年には国籍を回復するという波乱万丈の人生を歩んだ。ロストロポーヴィチは、モスクワ音楽院で学んだ後、チェリストとして活躍する一方、1961年には指揮者としてもデビュー。1963年「レーニン賞」受賞。しかし、1970年社会主義を批判した作家アレクサンドル・ソルジェニーツィンを擁護したことによりソビエト当局から”反体制”とみなされ、以降、国内演奏活動を停止させられる。1977年アメリカ合衆国へ渡り、ワシントン・ナショナル交響楽団音楽監督兼首席常任指揮者に就任。その後、1990年にはワシントン・ナショナル交響楽団を率いて、ロシア(旧ソ連)において16年ぶりに凱旋公演を行い、国籍を回復。2007年ロシア政府より勲1等祖国功労章を授与された。ロストロポーヴィチは、芸術や言論の自由を擁護する立場から、さまざまな活動を繰り広げた。これらの経歴により、世界文化賞、ドイツ勲功十字賞、イギリスの最高位勲爵士、フランスのレジオンドヌール勲章、アメリカの大統領自由勲章など、30ヶ国を超える国々から130以上もの賞を授与された。このLPレコードは、ドヴォルザーク:チェロ協奏曲を愛して止まなかったロストロポーヴィッチが、5度目となる録音を、カラヤン指揮ベルリン・フィルと行ったものである。ロストロポーヴィッチの演奏は、男性的な豪快な側面と繊細な側面とを併せ持っていると言われるが、このLPレコードは、正にこのことを裏付けるかのようなスケールの大きく、しかも情緒に富んだ、如何にもドヴォルザークらしさを表現した、見事な演奏を繰り広げており、この録音によってドヴォルザーク:チェロ協奏曲の真髄を余す所なく我々に伝えてくれている。カラヤン指揮ベルリン・フィルの伴奏もまた素晴らしく、ロストロポーヴィッチの名演と相俟って、聴くものに感動を与えずにはおかない。このLPレコードの録音は、名盤がひしめくドヴォルザーク:チェロ協奏曲の録音の中でも、飛び切り傑出した一枚と言って間違いはないであろう。(LPC)