シューベルト:楽に寄す
夕映えに
セレナード(歌曲集「白鳥の歌」より)
別離(歌曲集「白鳥の歌」より)
春に
菩提樹(歌曲集「冬の旅」より)
くちづけを贈ろう
旅人の夜の歌
ひめごと
シューマン:月の夜(「リーダークライス」より)
誰がお前を悩ますのだ(「ケルナーの詩による12の歌曲集」より)
古いリュート(「ケルナーの詩による12の歌曲集」より)
新緑(「ケルナーの詩による12の歌曲集」より)
二人のてき弾兵
R.シュトラウス:ああ悲し、不幸なるわれ
私は愛を抱いている
バリトン:ハンス・ホッター
ピアノ:ジェラルド・ムーア
LP:東芝EMI(SERAPHIM) EAC‐30197
ハンス・ホッター(1909年―2003年)は、ドイツ出身の名バリトン歌手。その歌声は、深い思慮に満ちたもので、音質で言うとバスに近いバス・バリトンが正確であろう。ハンス・ホッターは、ワーグナー歌手として特に名高く、「ニーベルングの指環」のヴォータン、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」のハンス・ザックス、また、「パルジファル」のグルネマンツなどにおいて高い評価を受けていた。同時にホッターは、シューベルト、シューマンやR.シュトラウスさらにヴォルフなどのドイツ歌曲についても定評があった。特にシューベルトの「冬の旅」「白鳥の歌」を歌わせれば右に出るものがないほどの歌唱を聴かせた。度々の来日で日本での人気も絶大であったが、特にシューベルトの「冬の旅」と言えばハンス・ホッターといったイメージが定着し、他の歌手を寄せ付けなかったほど。多分唯一対抗できた歌手は、フィッシャー・ディスカウ(1925年―2012年)ぐらいであったろう。そんな大歌手のハンス・ホッターが、お得意のドイツ・リートの選りすぐりの名曲を歌ったのが、このLPレコードである。どの曲を聴いても、ホッターの厚みのある歌声が実に気持ちいい。その存在感は、他に比較する者がないほどだが、さりとて、自分勝手な世界に埋没するするのはでなく、むしろ一曲一曲を実に丁寧に歌い込む姿勢がひしひしとリスナーに伝わる。この辺の真摯な歌う姿勢が、日本で人気が高かったことの原因の一つであろう。この“マイ・フェイバリット・ソング”とも言うべきハンス・ホッターのこのLPレコードは、常に手元に置き、聴きたい時に直ぐ聴けるのが一番の幸せというのが私の素直な感想。ハンス・ホッターとの息がぴたりと合ったジェラルド・ムーア(1899年-1987年)のピアノ伴奏がこれまた絶品。バリトンのハンス・ホッターは、 ドイツ、オッフェンバッハ・アム・マイン出身。ミュンヘン音楽大学で学ぶ。1930年「魔笛」でオペラデビュー。1950年メトロポリタン歌劇場にデビューし、ヴァーグナー作品をを演ずる。1952年バイロイト音楽祭に出演、以後15年にわたり主要なワーグナー作品に出演し、高い評価を受ける。1972年 「ワルキューレ」のヴォータンを最後にオペラの舞台を引退。ピアノのジェラルド・ムーアは、英国ハートフォード州ウォトフォード生まれで、カナダのトロントで育つ。ピアノ独奏者としてより、ピアノ伴奏者としてその名を知られた。1954年に大英勲章(OBE)を受賞。(LPC)