ショーソン:詩曲
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ
ハバネラ
ラヴェル:ツィガーヌ
ヴァイオリン:アルテュール・グリュミオー
指揮:マニュエル・ロザンタール
管弦楽:コンセール・ラムルー管弦楽団
録音:1966年3月(ショーソン/ラヴェル)、1963年4月(サン=サーンス)、フランス、パリ
発売:1980年
LP:日本フォノグラム(フィリップスレコード) 13PC‐242
このLPレコードは、フランコ・ベルギー楽派の泰斗アルテュール・グリュミオー(1921年―1986年)が、ショーソン、サン=サーンス、ラヴェルのヴァイオリンとオーケストラのための名曲を収録した一枚。グリュミオーは、ベルギーに生まれ、ブリュッセル王立音楽院で学ぶ。その後、パリに留学してジョルジュ・エネスコに入門。デュボアとエネスコに学んだグリュミオーは、正統的フランコ・ベルギー派のスタイルを後世に遺したことで知られる。第二次世界大戦中は、ナチス・ドイツ占領下のベルギーにおいて独奏会や室内楽の演奏旅行を行った。第二次世界大戦後は、ピアニストのクララ・ハスキルをパートナーとした演奏活動などを展開し、”黄金のデュオ”と評され数々の名盤を遺した。そして、ソリストとして世界的な名声を得ることになる。グリュミオーは音楽界への貢献が認められ、1973年に国王ボードゥアン1世により男爵に叙爵された。1961年には来日も果たしている。グリュミオーは、録音を数多く遺しているが、それらが全て気品のある艶やかな美音で貫かれており、ヴァイオリンの持つ特性を最大限に表現しきった名人芸は、現在でも、多くのファンを魅了して止まない。特にモーツァルトの演奏には定評があったが、ドイツ・オーストリア系の作曲家の演奏においてもその力量は、遺憾なく発揮された。だが、やはりその特徴を最大限に表現したのは、このLPレコードに収容されたショーソン、サン=サーンス、ラヴェルなどのフランス系の作曲家の作品であろう。その意味からこのLPレコードは、グリュミオーの真価を知るには最適な一枚ということができる。歌うところは存分に歌い、しかも、その余韻を含んだ表現力は、ヴァイオリンの持つ特性を余すところなく発揮させている。ここでの音楽は、外部との戦いでもなく、心の葛藤でもない。あくまで何よりも詩的な情緒を大切にし、微妙で自由な振る舞いの音楽の中に身を預け、そして陶酔の一時を過ごす・・・。グリュミオーのヴァイオリン演奏は、そんな夢ごこちの心境に、リスナーを知らず知らずに導き入れてくれるかのようだ。マニュエル・ロザンタール指揮コンセール・ラムルー管弦楽団の伴奏は、グリュミオーのあくまでも詩的で優雅な演奏を、一層引き立て、その効果を倍増させることに見事に成功している。(LPC)