★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ホロヴィッツのシューマン:ピアノソナタ第3番/スクリアビン:ピアノソナタ第5番

2024-02-01 09:38:50 | 器楽曲(ピアノ)


シューマン:ピアノソナタ第3番「グランドソナタ」
スクリアビン:ピアノソナタ第5番

ピアノ:ウラディミール・ホロヴィッツ

録音:1976年2月、5月

発売:1976年

LP:RVC(RCA RECORDS) RVC-2062 

 シューマンのピアノソナタ第3番は、1835年に作曲され、出版された時のタイトルは“管弦楽のない協奏曲”であったが、1853年にスケルツォの第2楽章が挿入され、大幅な改訂が行われ、現在の「ピアノソナタ第3番(グランド・ソナタ)」となったという経緯がある。この曲は、シューマン独特のロマンの香りは薄いが、その分、古典的な構成のがっしりとした華やかな、巨匠的なピアニズムのソナタに仕上がっている。ただ、全楽章が短調で書かれているためか、全体が憂愁を帯びた印象を受けるのも事実であろう。シューマンは、この曲を作曲していた頃、クララの父親から、クララとの交際を妨害されていたが、このことが何か影を落としていたのかもしれない。一方、スクリアビンは、全部で11曲のピアノソナタを作曲しているが、このLPレコードでは第5番のピアノソナタが取り上げられている。スクリアビンは、チャイコフスキーよりも一世代後の作曲家で、ショパンとワグナーの影響の下に作曲家人生を歩み始める。半音階的書法に加え、新しい和声体系を創始したことでも知られ、神秘的な曲を数多く遺している。この第5番のピアノソナタは、35歳の時に、4日間で作曲されたと言われている。ちょうどこの頃、大作交響曲第4番「法悦の詩」に取り掛かっており、「法悦の詩」の副産物とも見なされる。全体は、単一楽章の自由なソナタ形式で出来ている。これら2曲のピアノソナタを弾いているのが伝説のピアニストのウラディミール・ホロヴィッツ(1903年―1989年)である。ホロヴィッツは、ロシアのキエフに生まれ、キエフ音楽院で学ぶ。1920年、初のピアノ リサイタルを開催。その後、ベルリンパリ、ロンドンでの演奏会を経て、1928年アメリカデビューを飾り、「奇跡的なピアニストの登場」と大々的に報じられた。トスカニーニの娘ワンダと結婚し、1944年米国市民権を獲得。岳父であるトスカニーニとの共演は常に大きな話題となった。グラミー賞を合計26回受賞したほか、アメリカ政府より大統領自由勲章、アメリカ国民芸術勲章などを受章している。このLPレコードの録音は、1976年2月と5月に行われたもので、ホロヴィッツ73歳の時に当たる。このLPレコードを聴くと、とても70を過ぎたピアニストの演奏には聴こえず、若々しい、エネルギッシュな演奏に圧倒される。特に一音一音が明確に弾かれ、技術力の高さでも当時比肩する者のない、大ピアニストだったことが十二分に聴き取れる。(LPC)


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