ブラームス:交響曲第2番
指揮:ピエール・モントゥー
管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
発売:1976年
LP:キングレコード GT 9068
このLPレコードは、巨匠ピエール・モントゥー(1875年―1964年)が、ブラームスを指揮した録音であるところに価値がある。というのは、モントゥーはフランス人でありながら、ブラームスを敬愛し、ブラームスが晩年の頃に本人の前で演奏をしたことを終生誇りにしていたというほど。つまり生粋のフランス人でありながら、ベートーヴェンやブラームスなどのドイツ・オーストリア系作曲家の作品も得意としていたのだ。そんな指揮者のピエール・モントゥーの経歴を見てみよう。フランス、パリ出身。パリ音楽院でヴァイオリンを学び、同時に指揮活動も行う。1906年にコロンヌ管弦楽団を指揮してデビューを飾る。1911年からはディアギレフのロシア・バレエ団で指揮を担当。この時、ストラヴィンスキーの「春の祭典」「ペトルーシュカ」、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」、ドビュッシーの「遊戯」など、20世紀の名作バレエ音楽の初演を行っている。ピエール・モントゥーは、ロシア・バレエ団指揮者(1911年~1914年)を皮切りに、メトロポリタン歌劇場指揮者(1917年~1919年)、パリ交響楽団(1929年~1935年)の創立時の常任指揮者を務める。そしてボストン交響楽団音楽監督(1919年~1924年)を歴任後、1935年からはサンフランシスコ交響楽団の常任指揮者となり、同楽団の黄金時代を築く。1961年にはロンドン交響楽団の首席指揮者となり、死去するまでその地位にあった。来日時は、88歳と高齢であったが、そのときの演奏内容について、石田一志氏はこのLPレコードのライナーノートで「流麗で生気にとんだ音楽つくりは、年齢を感じさせるものではないということが、当時のもっぱらの評判であった」と紹介し、さらに「それはレコードで聴いても同様である。モントゥーの演奏は、スコアに徹底した忠実さをもってのぞむことによって、常にフレッシュであり啓示的ですらある。晩年にはとくにベートーヴェンやブラームスに名演を聴かせることが多くなった」と書いている。ブラームス:交響曲第2番がブラームスの「田園交響曲」と呼ばれるに相応しく、このLPレコードでのモントゥー指揮ウィーン・フィルによる演奏は、ロマンの香りが馥郁と漂う田園の広がりを連想させる。少しも奇を衒うことがない。しかし、その底流には、常に躍動感が漲っているので、聴いたあとの充実感は限りなく大きいのだ。このLPレコードを今聴くと、やはりピエール・モントゥーは、不世出の大指揮者であったのだなと実感させられる。(LPC)