ショーソン:交響曲変ロ長調
交響詩「祭りの夕べ」
指揮:ミシェル・プラッソン
管弦楽:トゥールーズ市立管弦楽団
LP:東芝EMI EAC‐40184
このLPレコードは、フランス人の作曲家エルネスト・ショーソンの2曲の作品を収めたものである。ショーソンというと「詩曲」が余りにも有名である反面、ショーソンのその他の作品を聴く機会が正直あまりなく、その作曲家像も我々日本人としては、いまいちピンとこないのではなかろうか。ショーソンは、大学で法律を学んだ後、24歳でパリ音楽院に入学する。叙情性と憂愁を含んだ独特の作風で作曲活動を展開し、ヴァイオリンとオーケストラのための「詩曲」、オーケストラ伴奏の歌曲「愛と海の詩」、交響曲変ロ長調のほか、多くの歌曲や室内楽曲を発表した。しかし、突然の事故で短い一生を終えることになる。それは、1899年6月にパリ郊外を自転車で散策中に柱に頭を打ち付けて即死したのだ。享年44歳であった。ショーソンは、セザール・フランクを師と仰ぐ、いわゆる“フランキスト”の一人であった。その頃、ショーソンはフランス音楽を広く知らしめるために設立された国民音楽協会の書記に就任している。ちなみに同協会の会長がフランク、書記がショーソンとダンディ、会計がフォーレであることで分かるとおり、フランス音楽の大御所が名を連ねている。この後フランスは、デュカス、ルーセル、オネゲル、ミヨーといった我々にもお馴染みの作曲家を輩出することになる。このLPレコードに収められているショーソン:交響曲変ロ長調は、あの有名なフランクの交響曲が書かれた直後に完成した作品で、全体が3楽章からなる交響曲という珍しいスタイルを取り、フランクの影響が強く反映されている。フランクの影響を受けた交響曲といっても、その陰鬱な抒情味と甘美なメロディーは、ショーソンなくしては成し得ない独自の世界を形作っていることも確か。基本的にはフランス音楽特有なエレガンスさには貫かれているものの、時にワーグナーを思わせる壮大な響きを奏でる場面やブルックナーの交響曲のように聴こえる一瞬もある。私個人としては甘美なメロディーに彩られた、如何にもフランスの作曲家の作品らしい微妙な彩を持った第2楽章に引き付けられる。交響詩「祭りの夕べ」は、交響曲変ロ長調の7年後に書かれた作品。イタリアの美しい自然の中において作曲されたこともあり、友人であったドビュッシーの作品にも似た、微妙な管弦楽の色合いの美しさが印象的な秀作。パリ出身のミシェル・プラッソン(1933年生まれ)指揮トゥールーズ市立管弦楽団の演奏は、ショーソンの叙情性と憂愁味を存分に表現し切っている。(LPC)