ドビュッシー:神聖な舞曲と世俗的な舞曲
ラヴェル:序奏とアレグロ
ピエルネ:ハープ小協奏曲
フォーレ:即興曲Op86
ハープ:アニー・シャフラン
指揮:アンドレ・クリュイタンス
管弦楽:パリ音楽院管弦楽団
ヴァイオリン:ティッシュ&シモン
ヴィオラ:レキャン
チェロ:ベクス
フルート:カラシェ
クラリネット:ブータール
録音:1965年11月
LP:東芝EMI EAC‐40110
このLPレコードは、フランス音楽の中でも極上のハープの音色思う存分味わえる一枚である。豊穣な香りのワインにも似て、ハープの響きは、この世ので聴く天上の音楽とでも言ったらいいのであろうか。ところでハープという楽器は我々にとって親しみのある楽器ではあるのだが、いつ頃から今の形のハープが定着したのであろうか。その辺を、このLPレコードのライナーノートで、三浦淳史氏が解説しているので紹介しよう。19世紀の終わりの頃から、フランスのハープ界は、急速な飛躍を遂げたようで、“ハープはフランス”という名声を高めたが、それは、新しいハープの開発が行われたからだという。エラール社が近代のペダル・ハープの形を確立し、一方、プレイエル社は、半音階ハープを試作した。プレイエル社は、1903年の初頭、ブリュッセル音楽院のコンクール曲として、ドビュッシーに半音階ハープのための作品を委嘱し、その結果生まれたのが「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」。一方、エラール社も負けてはならじと、ラヴェルにペダル・ハープ用の曲を委嘱し、その結果生まれたのが「序奏とアレグロ」。その後、半音階ハープは、改良されたペダル・ハープに座を明け渡すことになった。このLPレコードの最初の2曲は、フランスのハープの歴史そのものであるドビュッシーの「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」と、ラヴェルの「序奏とアレグロ」が収録されている。フランスのハープ奏者というと直ぐに思いつくのは、当時一世を風靡した閨秀ハーピストのリリー・ラスキーヌ(1893年―1988年)だ。そのリリー・ラスキーヌの高弟が、このLPレコードで演奏している女流ハーピストのアニー・シャフラン(1940年生まれ)なのである。アニー・シャフランは、16歳でパリ音楽院のハープ科を首席で卒業。翌年、コロンヌ管弦楽団の首席奏者となり、ヨーロッパ各地での演奏旅行によってその名がヨーロッパ中で知られるようになった。このLPレコードの演奏でも、アニー・シャフランのハープ演奏は、如何にもフランス音楽の精髄を極めたような、精緻で、しかも麗しい雰囲気が横溢したものになっており、ハープの持つ独特の優雅で、馥郁たる余韻を持った音楽を存分に味わうことができる。アンドレ・クリュイタンス(1905年―1967年)指揮パリ音楽院管弦楽団の伴奏が、これまた幻想的で素晴らしい演奏を聴かせてくれる。(LPC)