フォーレ:ピアノ四重奏曲第1番/第2番
ピアノ:ジャン・ユボー
ヴァイオリン:レイモン・ガロワ=モンブラン
ヴィオラ:コレット・ルキアン
チェロ:アンドレ・ナヴァラ
発売:1976年
LP:RVC(ΣRATO) ERX‐2221
フォーレのピアノ四重奏曲というと、私はすぐにGR盤(歴史的名盤)にあった、ロン、ティボー、ヴィユー、フルニエによる第2番のLPレコードを思い出す。マルグリット・ロンのピアノ演奏が、この曲の力強くも幽玄な趣を巧みに表現しており、引き込まれるように聴いていた。しかし、GR盤はあくまで歴史的名盤であって音質は芳しくなかった。そんな時にこのLPレコードに出会い、ようやくフォーレのピアノ四重奏曲が音質の良い状態で聴けることが何よりも嬉しかったのを思い出す。フォーレの室内楽曲というと真っ先の思い浮かぶのが2曲あるヴァイオリンソナタである。それ以外の曲は?と問われてすらすらと答えられる人は、相当なフォーレファンか、キャリアを積んだリスナーだろう。正解は作曲された順に、ピアノ四重奏曲第1番(1876年)、ピアノ四重奏曲第2番(1879年)、ピアノ五重奏曲第1番(1906年)、チェロソナタ第1番(1918年)、ピアノ五重奏曲第2番(1921年)、チェロソナタ第2番(1922年)、ピアノ三重奏曲(1923年)、そして遺作となった弦楽四重奏曲(1924年)。これらのフォーレの室内楽曲に共通しているのは、弦楽四重奏曲を除き、全てピアノが使われ、これにより実に流麗な感じの室内楽曲が揃うことになった。さらに特徴として挙げられるのが、全て短調で書かれていること。これは、フォーレの曲が持つ秘めたロマン性という特質を発揮させることに繋がる。フォーレの室内楽は、日本では、ヴァイオリンソナタが人気があるが、欧米では、このLPレコードに収められたピアノ四重奏曲の方が人気が高いという。そう言えば、ドイツでは「フォーレ四重奏団」の活躍を思い出す。この2つのピアノ四重奏曲は、7年の間をおいて、どちらも国民音楽協会の音楽界で初演された。このLPレコードでの4人は、如何にもフランスの演奏家らしく、限りなく優雅な雰囲気を湛えた演奏を聴かせてくれており、フォーレの室内楽の醍醐味を味わうのには打って付けなものと言える。2曲とも、第2楽章、第3楽章の2つの楽章が、一際印象深い楽章に仕上がっている。ピアノのジャン・ユボー(1917年―1992年)は、フランス、パリ出身。 9歳でパリ音楽院への入学を許され、わずか13歳でピアノ科の首席となる。1935年「ルイ・ディエメ賞」受賞。ソリストとしても室内楽奏者としても著名なピアニストであった。(LPC)