シューマン:ピアノ五重奏曲
ピアノ:アルトゥール・ルービンシュタイン
弦楽四重奏:ガルネリ弦楽四重奏団
アーノルド・スタインハート(第1ヴァイオリン)
ジョン・ダリー(第2ヴァイオリン)
マイケル・トリー(ヴィオラ)
デヴィッド・ソイヤー(チェロ)
発売:1969年
LP:日本ビクター SRA-2523
このLPレコードは、シューマンの室内楽の名品「ピアノ五重奏曲」をアルトゥール・ルービンシュタイン(1887年―1982年)とガルネリ弦楽四重奏団が演奏している。この曲は、シューマンの代表的な室内楽作品で、ピアノと弦楽四重奏のために書かれている。1842年の9月から10月にかけてのわずか数週間のうちに作曲され、妻のクララ・シューマンに献呈された。同年中に3曲の弦楽四重奏曲とピアノ四重奏曲を作曲しており、シューマンの“室内楽の年”として知られる。このLPレコードのライナーノートで上野一郎氏は「これは、今年82歳になる老大家のルービンシュタインと、30代の若手メンバーで組織された新進のガルネリ弦楽四重奏団が合奏しているところに新鮮な魅力を見い出すことのできるレコードである」と指摘している。この中で上野氏は「ルービンシュタインのレコード歴は50年に近い年月に及んでおり、室内楽もハイフェッツ、フォイアーマン、ピアテゴルスキーと組んだ”百万ドル・トリオ”で知られているが、弦楽四重奏団と合奏した室内楽のレコードは意外に少ない」と書いている通り、ルービンシュタインの遺した録音の中でも貴重な一枚と言っていいであろう。アルトゥール・ルービンシュタインは、ポーランド出身のピアニスト。20世紀の代表的なピアニストの1人で、特にショパンの演奏では当時最も優れたピアニストと目されていた。前半生はヨーロッパで、第二次世界大戦中・後半はアメリカで活躍。1910年、第5回「アントン・ルービンシュタイン国際ピアノコンクール」で優勝した。ガルネリ弦楽四重奏団は、1965年にニューヨークでデビューし、その1年後には、辛口評で知られたニューヨーク・タイムズ紙のハロルド・C・ショーンバーグが「ガルネリ弦楽四重奏団は、世界最高のクァルテットの一つである」と賛辞を掲げたほど、当時実力を持った弦楽四重奏団であったが、2009年に活動を中止してしまった。このLPレコードでのルービンシュタインのピアノ演奏は、ルービンシュタイン特有の中庸を得た特徴に加え、伸びと穏やかさを持った安定感のある演奏を存分に聴かせる。ガルネリ弦楽四重奏団もルービンシュタインのピアノ演奏にぴたりと寄り添い、シューマンの独特なロマンの世界を、繊細さと優雅さたっぷりに聴かせてくれている。この録音は、”健康的なシューマン”の秀演とでも表現できようか。(LPC)